復活

□何処かで響いた銃声
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街が静まり返り、人も少ない。
イタリアのとある街。
イタリアにはマフィアが多いとよく言われている。

ボンゴレファミリーの10代目ボスである沢田綱吉は静まり返った街を一人で歩いていた。
もちろんボスということだけあって何時誰に命を狙われても可笑しくない。
そんな彼が此処に居るのには訳がある。

婚約者である九々奈から迷子になってしまったという連絡を受け、迎えに来ているのだ。
ビアンキや京子など、女子同士で遊んでいて気付けばとっくに日が暮れていた。
慌てて帰ろうとした九々奈は混乱して道を間違えてしまったのだ。

「ったく…今じゃどっちの方がダメダメなんだか…」

綱吉は過去の事を思い出しつつ彼女を探す為歩を進めながら辺りを見渡す。
するとーーーー。

パァァンッ…!

「…っ?!」

大きな悲鳴と共に銃声が響き渡った。
綱吉はその悲鳴に聞き覚えがあった。

そう、悲鳴の持ち主は綱吉が探している九々奈である。
思いもしない出来事で彼は焦りを露わにし、銃声が聞こえた方向ヘと急ぐ。

1発で仕留めたのか、2発目が鳴ることはなく、ただ静寂だけが綱吉に付きまとう。

頼む、無事でいてくれ…ーー。

そう願いながら探して数分。
路地裏に横たわる人影を見付けた。
他に人の気配はない。
恐らく撃った後、すぐ逃げたのだろう。

綱吉は人影に恐る恐る近寄る。

大丈夫、死んでなんかいない。
生きている。もしかしたら九々奈じゃないかもしれない。そうだ、俺の聞き間違いだったんだ。他人だろう。生きていてくれ。

心の中で願っていたが、その願いは、何一つ…叶わなかった。

「嘘、だろ…?」

綱吉の目の前に横たわっているのは、九々奈だったのだ。

「九々奈…?返事をしてくれよ…生きてるんだろ?」

ゆっくりしゃがみ込んで九々奈に触れる。
だが、彼女は微動だにしない。

「何か、言ってくれよ…いつもみたいに笑ってくれよ…もう、ツナ遅い!って、叱ってくれよ…」

胸元を確認し、呼吸をしていないことを悟った綱吉は九々奈を優しく抱き締め、囁く。
彼の目には涙が溜まっている。

瞬きをする度に頬を伝う暖かい涙が、九々奈の顔にポツリ、ポツリと落ちていく。

それでも動かない、息をしない彼女を強く抱き締め、静まり返った街に一人の悲しみに満ちた叫び声が響いた。





fin.

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