三星記

□ナイルの憂鬱
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「ナイル…」

あうっ先輩…


「ナイル、今まで冷たくして悪かったな。俺、やっと気がついたよお前への気持ち…」


先輩っ…
先輩がナイルの頬に手を…


「いつもナイルは素直に言ってくれるんだ。俺も素直に気持ちを伝えないとな…」


あううッッ!
先輩の顔がどんどんナイルに近づいて来て…!!!


「な、ナイルは…」
「喋るなよ。」


ううっ夢みたいッッ
いつもはナイルに素っ気ない先輩が、ナイルに優しくしてくれて!しかも先輩とキスなんてぇぇえ!!!!






「ナイルっ!」
「あうっ!」


頭の痛みでナイルは現実に引き起こされた。
ここはシュライハーツ・フィブリットが班長を務める軍施設の事務処理部の一室。
さっきの先輩とナイルのやり取りはオレンジ髪で三編みツインのナイル・マネリスの夢だ。
先輩というのはナイルの一方的な片思いの相手であり、この部屋の班長シュライハーツのことだ。

そしてナイルを夢から引き起こした人物はプラチナブロンドでスレンダー体型のキリシア・クナナロ。右手に丸めた紙を持ってナイルの斜め後ろに立っている。


「さっきのは夢!?うぅぅ〜そんなぁ…
あと一センチで先輩とキスだったのにー!なんてことするのよ、キリシアー!」


「何を寝惚けたことを言っているのかしらん、ナイル。班長とキスなんてそんな夢みたいなことあるわけがないじゃない」


「うーっ!だから夢で見てたのようっ。こんな夢滅多に見れないのにキリシアが起こしたから!キリシアのバカー!!」


キリシアはハイハイと軽くあしらうとナイルの怒りを無視して要件を話だした。


「その愛しい班長から伝言よん。『第2研究室からアレもってこい』ですって」


つーん。


怒ったナイルはキリシアの話に返事をしないで椅子から立ち上がった。
ふとキリシアが思い出したように話だした。

「そう言えばさっき班長が珍しく身なりがキチンとしていたわねん。顔も洗っていたし、白衣もシワのないパリッとしたものだったわん。」


その話にナイルが何か言うよりも早く、珍しく仕事をしていた筋肉ムキムキのウカナスが食い付いてきた。


「ホホホ。キリシア殿も気がつきましたか?私も気になって班長に聞いてみたところ、なんでも人と会うとか。」


人…?


「班長客人やミデリア室長が来る時でもいつも普段通りの格好なのに珍しいわねん。皇帝クラスのお役所か何かかしらん?」


「ひっとしたら女性かもしれませぬぞ?ホホホ。」


ウカナスの一言を聞き捨てられなくてナイルが叫んだ。


「あうぅっ、ウカナスさんそんなわけないです!変な冗談言うの止めてくださいー!」


そしてナイルは強く部屋のドアを閉めて出て言ったのだった。


「筋肉バカ男。あなた一言多いわよん。」


「ホホホ。申し訳ない」



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