トワイライト

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『……さん!』


ふと身体を揺すられ、目を開けると前に見た夢に出た少年がいた。前より少しずつハッキリ見えたがやはり、顔は見えなかった。


『また、本読んでいるけど読書が好きなの?』

『ま、まあな』

『どうしたの?何か様子おかしい…』

『気のせいだ。…じゃあな。用があるんだ』


早くこの夢から醒めたい。これを見ると胸がズキンズキンと痛み出して苦しい。それなのにそいつは俺の手を掴んだ。


『まだ、どこにもいかないよね?』


悲しげな声に俺は動揺してしまう。俺はこいつを知らない。だから何て言えば良いんだろうか。俺は掴んだその手を握った。


『大丈夫。行かない』

『良かった。でも行くときは……』


その時、視界が真っ暗に染まった。再び、辺りを見渡したがさっきの奴は何処にもいない。


『レイン』


ふと呼ばれて振り向くとそこには幼い頃の俺がいた。


「昔の俺なのか?」

『俺はお前じゃない』


微笑みながら答えた幼い俺の言葉に疑問を感じた。ただでさえ、神妙な空間に戸惑っている。


「二重人格だって言いたいのか」

『違うよ』


フワフワと空中に浮かびながら遊んでいる。正直、こいつが俺なのが信じられない。


『お前は気付かないフリしている』

「…俺は何も知らない」

『嘘つき。お前は向き合うのが恐いから逃げているだけ』


俺が逃げてる?
夢の中だって知っているが分からない事を言われても分かるハズがない。


『何で見て見ないフリなんてする?お前はもう、何も恐いものなんかないのに…』


ギュッと抱き締められ、そいつは上目遣いをした。その目には涙で濡れている。


「お前は一体…」

『お前が受け入れるなら、分かるよ』


突然、俺を光が輝く方へ突き飛ばした。そいつは微笑みを浮かべると幼い頃の俺の姿からあの夢の少年に変わった。
手を伸ばそうとしたが意識が遠退いた。




「おい、レイン。さっさと起きやがれっ!」


軽く蹴られ、完全に目を覚ました。辺りを見渡すとさっきまで本を読んでいた場所だった。どうやら、読書中に眠ってしまったようだ。
目を擦りながらザナークに視線を向けた。


「…どうしたんだ」

「ちっ、行くぞって時にぐっすり寝やがって。かなりうなされてたが嫌な夢でも見たのかぁ?」

「嫌な夢じゃないが変な夢だ。気分が悪い」

「そりゃあ、お気の毒に。ほらっ、行くぞ」


ザナークに急かされ、地面から立ち上がり、汚れを払った。



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