トワイライト
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沖田が抜け、俺も試合に出ようとしたが必要ねぇと断られた。俺はザナークが勝つと思っていた為に身を引いた。
だが、ザナークは敗れた。
しかし、敗れた事はどうでもいい。それより、あの事を聞かなければならない。俺はザナークの所へ直ぐに向かった。
「ザナーク。お前、何があったんだ」
「はぁ、何の事だ?」
「お前の化身に巻き付かれた鎖は一体、何なんだ!」
三國志時代の時にはあんな鎖はなかった。その事を問い詰めるとザナークはふっと笑いだした。
「知らねぇよ」
「しらばっくれるな。お前、俺に何を隠しているんだ」
「隠している?お前に隠し事して何になるんだぁ。ジジイに報告するってか?」
「違う。そんな事じゃない。俺はお前を心配して言ってるんだ」
「心配だと?」
突然、不機嫌な表情をしたザナークは舌打ちをして俺を睨み付けた。
「てめぇ、心配するのは自分の方じゃねぇのか」
「俺が?」
「あーそうだったな。てめぇ自身がジジイどもに洗脳されてしまったからなぁ」
その瞬間、体が硬直した。頭の中でこれ以上聞くなとサイレンが聞こえてくるのに俺の口は震えながらも喋る。
「せ、洗脳ってどういう事だ?」
「言った通りだろ。お前はジジイどもに利用されてるってよ」
「…嘘だ」
俺はエルドラドに入ってから命令に従っている。それなのに利用されてるなんて信じられない。
「だったら、エルドラドに入ってから今の間の記憶はあるのかよ?」
「…………」
正直、曖昧だった。
俺がエルドラドに従っていたのは嘘だったのか?徐々に分からなくなる。ニヒルな笑みを浮かべるザナークが俺の耳元で囁く。
「お前はジジイどもから逃げた。けど、逃げられなかった。お前は…ずっと」
にげた、おれが…?
あの人達からにげだした?
突然、頭痛がした。今まで以上の激痛が走った。頭に過ったのは夢の中にいた少年の姿が今度ははっきりと映った。
『時雨さん!』
そいつはずっと俺を見つめていた少年と瓜二つだった。そして、時雨と呼ばれた時、俺の中で何が壊れ始めた。
「う、うわあああああぁぁっ!!!」
“時雨"として身を潜めた記憶、“レイン"として従う記憶に混乱を隠せなかった。叫び声を上げる俺に周りも動揺している。
その中にはアイツがいた。
混乱する俺は咄嗟にスフィアデバイスを取り出して、その場から逃げ出した。
崩れた、アイデンティティ
(もう、何が“真実"がさえ分からない)