四季のへぼ小説 壱

□邂逅/ダテサナ
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それは、そう
いつもと変わらない、ただの戦だった。
――――はず、なのだが…


邂逅


本陣で戦況を窺っていた政宗のもとに、ある知らせが届いたことから全ては始まった。
「政宗様!前線の部隊が二つ、退却しました!」
「はァ!?いくらなんでも早すぎるんじゃねぇか!?」
「しかし、事実、その部隊の者達が本陣まで退却してきております!」
慌てた様子で言う部下に、政宗は眉を寄せた。
(shit…さすがは甲斐・武田軍ってことか…あなどれねぇ…)
「どうなさいますか!」
「ったく…しょうがねぇな。――敵の数は?」
「それが…」
部下は困ったように言葉を濁し、うつむいた。
「Say quickly!ウジウジしてんじゃねぇよ!」
「はっ、はいぃっ!!」
イラだった政宗の怒声に驚き、部下は口を開いた。
「敵は一騎!『紅蓮の鬼』、真田幸村とのことですっ!」
「――なるほど、紅蓮の鬼、か…」
カチャリ、と政宗の腰にある六本の刀が音をたてる。
「俺が行って、直々にお相手してやんねぇといけなさそうだな。――小十郎!本陣、任せたぜ!」
「はぃぃっ!!?」
突然言われて、驚いた小十郎を無視して、政宗は馬にまたがり走り出す。
「ちょっ…政宗様!一人で行くなんて無謀すぎますーッ!!」
「Let's party!YA-HA-!」

‐沈黙‐

「片倉殿ー。戦中の梵に、何言っても無駄だと思うよ。」
「うちの殿だし、大丈夫だろ、な。」
へたりこんで、胃を押さえている小十郎の右肩を成実が、左肩を綱元が笑いを堪えながら叩き、
「政宗様ァ……!!」
ギリギリと痛む胃と、その原因である主に怒りを覚え、小十郎は自らの刀を地面に力一杯叩き付けた。

哀れ、小十郎。
そうして、今日も彼の胃は荒れていくのである。
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