四季のへぼ小説 壱

□紅色の夢/オヤユキ
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戦場をかけ巡るのは己の仕事
そして何も考えずに人を斬る
自分の身体が赤黒く染まっても
愛しい貴方の敵を消していくその行為に

ためらう事など、あるはずがない


紅色の夢



「幸村。お前、なんでそこまで武田の爺さんの事、気になるのか?」
ある戦中、目の前で刀を構えたまま、蒼い竜が言った。
「……何が言いたいのでござるか?それにお館様は爺ではありませぬ」
「まぁ、武田の旦那が爺かどうかはおいといて、だな。…戦ってる時に、時々お前の視線が本陣に向くんだよ。――気づいてたか?」
「……そうなんでござるか…?」
まったく気付かなかった。
確かに本陣を心配してはいたが、刄を交えている時にまで見ていたとは…。
「…それは申し訳ない…某、まっく意識していなかった故に…」
「別に良いけどよ…そんなにアイツの事、好きなのか?お前」
「なっ……!」
顔が急にほてりだす。
この男は何を言い出すのか、と慌てた。
「は、破廉恥でござる!」
「HA!俺は聞いただけだぜ?何を勝手に想像してんのかは知らねぇが……いや、武田の旦那の事だから、思い出してた、とかか?」
「――――ッ!!」
「おい、顔が茹で蛸みたいになってんぞ」
嘲笑するように――いや、実際嘲笑している政宗殿を睨んだ。
「うッ、うるさいでござるっ!」
「照れてる顔も可愛いぜvV」
「政宗殿に言われても嬉しくないでござる…」
「それ、なにげに傷つくからヤメロ」
つぶやいた彼の言葉にそっぽを向いた瞬間、戦の終わりを告げる音が響いた。
「Shit!もう終わりかよ…」
「そのようでござるな」
互いに武器を下ろすと、小さく溜め息をつく。
「やっぱり決着はつかなかったな…。ま、簡単につかれても困るんだが…」
「そうでござるな。………では、某は帰りまする」
軽く会釈をして、踵を返すと本陣に向けて歩きだす。
「………おい、幸村。」
「?」
いきなり呼び止められ、振り向くと政宗殿は笑っていた。
「帰ったら思う存分武田の旦那に可愛がってもらうんだな!」
「お、お館様はそんな、政宗殿のように破廉恥な事は言わないでござる!」
あまりにも恥ずかしくて、そのまま走って帰った。(と、言うより逃げた)
後ろから政宗殿の笑う声が聞こえたが、無視して全力で走り去る。


しばらくあの人とは会いたくないでござる。
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