四季のへぼ小説 壱
□本音と建前(☆)
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キュィ、と言う可愛らしい鳴き声と共に、体にのしかかる僅かな…心地の良い重さ。
そして名を呼ぶ、少し高めの声
あぁ、気持ちいい。
だからもう少し寝かせてくれ、とさりげなく主張したら
耳を舐められた。
擽ったい事この上ないので
仕方なく、目を覚ます事にする。
『本音と建前』
【AM.6:20】
携帯の液晶に表示された、角ばった無機質な文字。
まだ寝ていられる、と起きてから後悔したが…まぁしょうがない。
いくら休みとは言え、やる事はあるし、何より…
「遅い!いつまで寝ておる気だ!」
「そう騒ぐなよ……起きたんだから文句言うことなんて無いだろ?」
俺の腹の上に乗っかって、ギャンギャン騒いでいる子供――…‥もとい、狐の元就。
そう、彼の世話をしなくてはいけないのだ。
二年前の雨の日に拾って保護した狐がまさか人の形をとるなんて思いもしなかったが、今では良い同居人になっている。
………とりあえず建前的にはそういう事にしておいてはいるのだが。
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