四季のへぼ小説 壱

□蜜
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そう。
あの男はいつも突然で、


……それを自分は拒めなかっただけなのだ。



『蜜』



その日は、どうも落ち着かなかったのだ。
朝から何故か……、妙な気分がする。

「元就様、どちらへ行かれるのですか」
「………城下だ。供は要らぬ」

心配そうに自分を追いかけてきた小姓の少年にきっぱりと言い切り、いつもよりやけに賑わっている城下へと足を向けた。

あぁ、そういえば今日は祭りの日だったな、と走り回る子供達を見つめながらふと思う。
そして、それと同時に何故か寂しさを感じる自分がいる事に気が付いた。


賑わう町

祭りを楽しむ民の笑顔


それこそは自分が非情な人間になってでも護ろうとしたモノなのに。

「…………ふん」

何故、自分はこんなにも心に隙間を感じる?
目の前に広がる小さな屋台を眺めながら、僅かに吹く風が身の内を駆け抜けていく感覚に身を震わせた。

その空虚感は………、



あぁ、そうだ。



隣に奴が居ないから。
あの馬鹿みたいに素直で単純、それでいて芯の強いあの銀色の鬼が。


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