四季のへぼ小説 壱

□紅色の夢/オヤユキ
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…屋敷に帰ってから、お館様に話すといきなり笑われてしまった。
「わははっ!そうかそうか。伊達の小倅にからかわれたのじゃな、幸村」
「笑い事ではないのでございまする!某は、政宗殿に侮辱されて怒っているのでござる!」
子供みたいだ、と自分でも思う。
だけど、ついこの人にだけは甘えてしまう己がいるのも事実。
「して、お前は一体何に照れておるのだ?」
「……はぃ?」
「幸村、顔に出ておるのに気づいておらんのか」
また、顔か、と溜め息が出るのと共に、この人にはかなわない、と思う。
「何故、某が恥ずかしがっている…と?」
「情事前のお前によく似とったからのぅ」
「ぇえっ!?――お、お館様っ!」
いきなり突拍子もない事を言われ、慌ててしまい、お館様に向かって叫んでしまう。
「なんじゃ。可愛らしいものだと思うていたのだが…嫌か?」
「い、いえ…嫌などでは…」
「なら文句を言うでない。それともなんじゃ、儂に構って欲しくて誘っておるのか?」
そう言った瞳に一瞬本気の色が見えた。
……嫌な予感がする。
「そんな事、幸村はしておりませぬ…」
「ほぅ……」
かなり危ない気がしてきた。
………お館様の雰囲気が変わってきていて、……まるで戦前のこの人の眼だ、と思う。
「なら、この赤い顔はどうした。伊達の小倅に、まだ何か言われておるな?」
「い、言われておりません…」
つい、どもってしまう俺の頬に、大きな手が近づいてくる。
怖い。
大好きな手のはずなのに、今は何故か怖く感じるのだ。
「相変わらず嘘が下手じゃな、幸村」
「お館様…」
白状してしまえ、と頭は叫んでいる。
でも、言ってしまうと、事態が悪化しそうな気もして。

………嫌な予感、更に強まる。
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