四季のへぼ小説 壱

□月読
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『小太ぁ、ちょっと聞いてよー!』
『………?』

ある夜、小田原栄光門の上でのんびりと月を眺めていた小太郎は、不意に来た客を出迎える事になった。
客と言うのも只の客ではなく、甲斐武田軍真田忍隊の長である猿飛佐助。

―…‥ついでに言えば、小太郎が目下片想い中の愛しい愛しい彼女(彼女違うから)なのであったり。


故に、佐助に好意を持っている小太郎は嬉しそうに佐助の話(大体は幸村の事に関する愚痴)を聞いているし、佐助も嫌そうな顔もせずに聞いてくれている小太郎には何の気兼もなく話をいつもしていたのであった。


『――…そういえばさぁ、最近困ってる事が有るんだよね』
『?(首傾げて不思議そうに)』

だが、いつもは愚痴くらいで終わる佐助が一週間前のその日は不意にこう切り出したのである。

『俺さぁ、髪の毛が最近伸びてきたから汚れやすくなったんだけど…』

そう言いながら自分の髪をいじると、佐助はため息をついた。

『戦場でホコリとか日光とかにあたり過ぎてバサバサに傷んでて嫌なんだよねー…』
『…!!』

バサバサ、と言いながら自分の髪に指を通す。
確かにその明るい柿色の髪は至るところが切れ毛になっていたり、枝毛ができていたりしているようだ。

『傷んでるのは構わないんだけど、真田の旦那が触ってくる度に絡まって痛いんだよ〜』

佐助はそう言いながら笑っているが、小太郎にとっては大問題であったらしい(色々と)。

…一人、悶々とその日から悩み始めたのだった。




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