翠の桜

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お母様はお祖父さまの進めで十三でお父様に嫁ぎ
十四で一番上のお姉さまを生み
十六でお兄様を生み
十七で二番目のお姉さまを生み
二十で私を生んで
そのまま亡くなったらしい


その後嫁いできた義理の母は子供を授かることはなく
今も収まらないお父様の浮気癖に怒り、悲しみ、この間実家に帰ってしまった
詳しくは知らないけれど噂によると離縁したらしい


一番上のお姉さまはお父様の勧めで十二で義兄上に嫁ぎ
翌年に男の子を生み
そのまた翌年に女の子を生んで
今は中々帰らない夫を恨み、悲しみながら暮らしている


二番目のお姉さまはお父様だけでなく、お兄様にも進められて十五で入内され
十七で姫皇女様をお生みになった
その後、懐妊の兆しはない




『お父さまがね、私のお婿さまはお父さまが選んでくれるって言ってたの』
『え?』
『そんなのはイヤ
私は好きな人に嫁いで、しあわせにくらしたい・・・』
『…じゃぁ、僕がお嫁さんにもらってあげる!』
『え…?』
『僕じゃイヤ?』
『そんなことないけど…私のほうが年上よ?』
『かんけいないよ!僕は貴女のこと大好きだよ!
幸せにしてあげる!!』
『・・・ほんとう?』
『うん!やくそく!」
『ふふ、分ったわ約束よ?』
『うん!!』




・・・・・・そんな会話をしたのは一体幾つの頃だったのだろう

あの言葉をくれたのは、一体誰だったのだろうか・・・?



世の中の醜い面を知り、恋を諦めてしまった私にはもう思い出すことも出来ない、遠い遠い昔の約束・・・

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