短編
□私の唯一
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月明かりだけが逃げる男と追う私をほのかに照らし出す
私は相手との距離を縮め、右手に握る苦内(くない)を投げた
「っ!」
それは男の足に命中し、小さな呻き声を上げて男が転ぶ
「…もう、終わり?」
「くっ…」
「そう…」
顔を歪める彼を見下ろし、小太刀を抜く
「選ばせてあげる
自分で死ぬ?私が殺す?」
「…」
男は答えない
ただ私を黙って睨みつけるだけ
「自分で死ぬ気は無い、という事でいい?
なら、殺してあげる」
ゆっくりと小太刀を振りかぶった
「サヨウナラ」
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