短編

□籠の鳥
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遥か昔より神の血を引くとされてきた一族
つい数十年ほど前まで栄華を極めた一族
現在、猛威を振るう一族

全員が、何時命を落とすとも知れぬこの戦乱の世

私のように“彼ら”に愛され、加護される存在は本当に希少らしい

“彼ら”は口を揃えてこう言う


『何時か、お前は“私”だけのものになる』




毎夜、代わる代わる私を訪ね
同じ事を繰り返し、同じ事を口にし
同じように去っていく

時には繊細な刺繍が施された着物を
時には細やかな細工の髪飾りを
時には煌びやかな宝石を私に与え、着飾らせては美しいと褒め称えて喜ぶ

その癖、他の者から与えられた
着物を、髪飾りを、宝石を見ては表情を歪め、乱暴に私を攻め立てる

そして必ず最後にこう言うのだ


『お前は“私”の事だけ考えていればいい』





全員に自分のことだけ考えろと言われても無茶な話だ
大体、私を共有すると決めたのは“彼ら”
私を怒るのは筋違いというもの


…まぁ、そんな事言っても誰も聞いてはくれないのだけれど


だから私は心を殺し、時を待つ
矛盾だらけの“彼ら”を受け入れながら
何時かそんな必要がなくなる日を・・・



でも、それは一体何時になるの…?
(寿命の問題もあるし…)
(そんなに長くは待てないのだけれど…)

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