翠の桜
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「御機嫌よう、姫」
「ようこそお出でくださいました
今日はどの様なご用件で?」
「おや、婚約者に会いに来るのに用がないといけませんか?」
「・・・いいえ、そんなことは」
いつものようにやって来て、いつものように話し出すものだから、こちらもいつものように返すと、いきなり違う言葉を投げかけられて反応に戸惑う
決まり悪くて奥義で顔を隠し、息をつくと御簾の向こうに透ける業平殿の影の肩が軽く震えた
・・・笑われた…
唇を尖らせて顔を逸らす
業平殿は軽く咳払いをして口を開いた
「そう言えば、姫
提案なんですがね」
「…なんです?」
「そうですね・・・
その前に人払いをしていただけますか?」
申し出に何事かと眉を顰めつつも言われたように、人払いの合図を出した
一人残らず女房達が下がった所で問いかける
「これでよろしいかしら?」
「はい、どうも」
にこにこと笑顔を返す業平殿
そのまましばらく時間がすぎる
一向に要件を持ち出さない彼に痺れを切らして口を開いた
「で?提案とは何ですの?」
「ん?あぁ、そうですね
・・・姫手を出してくださいますか?」
「手?」
「はい、お渡ししたいものが」
「?」
首をかしげながら扇で御簾を少し持ち上げ、そこから手を差し出した
次の瞬間、起こることも知らずに・・・