翠の桜

□2
1ページ/2ページ



「御機嫌よう、姫」

「ようこそお出でくださいました
今日はどの様なご用件で?」

「おや、婚約者に会いに来るのに用がないといけませんか?」

「・・・いいえ、そんなことは」


いつものようにやって来て、いつものように話し出すものだから、こちらもいつものように返すと、いきなり違う言葉を投げかけられて反応に戸惑う

決まり悪くて奥義で顔を隠し、息をつくと御簾の向こうに透ける業平殿の影の肩が軽く震えた

・・・笑われた…

唇を尖らせて顔を逸らす
業平殿は軽く咳払いをして口を開いた


「そう言えば、姫
提案なんですがね」

「…なんです?」

「そうですね・・・
その前に人払いをしていただけますか?」


申し出に何事かと眉を顰めつつも言われたように、人払いの合図を出した
一人残らず女房達が下がった所で問いかける


「これでよろしいかしら?」

「はい、どうも」


にこにこと笑顔を返す業平殿
そのまましばらく時間がすぎる

一向に要件を持ち出さない彼に痺れを切らして口を開いた


「で?提案とは何ですの?」

「ん?あぁ、そうですね
・・・姫手を出してくださいますか?」

「手?」

「はい、お渡ししたいものが」

「?」


首をかしげながら扇で御簾を少し持ち上げ、そこから手を差し出した


次の瞬間、起こることも知らずに・・・
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ