翠の桜
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“我を思ふ 人を思はぬ むくひにや
わが思ふ人の 我を思はぬ”
私が送った歌に対する返歌
簡単に内容を説明すると、はじめに贈られてきたのが
「会った後の恋しく切ない思いに比べれば、お会いしなかった頃の辛さなど何ともないものでした」
見たいな感じ
それに対しての私の返事が
「浮名で名高いあなたの言葉は気にかけません。涙で袖が濡れてしまうでしょうから」
そしてさっきのがその返事
「私を思ってくれる人を思ってやらない報いでしょうか?私が思う人は私を思ってくれないのです」
私がこめた軽い厭味をさらりと否定して、逆に自分は私を好いているのにどうして私を思ってくれないのかと恨みを仄めかす
よく出来たすばらしい和歌だけど・・・
何?
この“恋の駆け引き”っぽい遣り取りは
なんで私があの業平殿とこんなことしてるの?
考え出すとむず痒いというか…なんともいえない感覚に襲われて仕方ない
そもそも父の命に従って結婚するつもりでいた私は恋をすることなど無いと思っていたんだ
それがいきなりこんな文の遣り取り
何か落ち着かないなぁ・・・
「姫様、お返事は如何なさいます?」
「え・・・あぁ、そうね」
促されて筆をとり甘くなりすぎないような詩を考える
結構な時間をかけて返歌を書き付け、侍女に手渡して一息
ふと顔を上げ、周りを見ると控えていた女房達が子を見守る母親のような目をしているのに気が付き、また居たたまれなくなった