翠の桜

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「あの…業平殿」

「なんです?」

「えっと…」


なんて聞けばいいのかわからなくて口ごもると業平殿に頭を撫でられた


「大丈夫、いくらでも待ちますよ」


優しく微笑まれて顔に熱が集まる

何なのよ・・・
いきなりこんなに優しくなられても困るじゃないの

赤くなっているはずの顔を俯いて隠しながらもなんとか口を動かす


「あ、あの、夢を、見たんです」

「夢?」


私の話に不思議そうに首をかしげる業平殿
話し出してみると勢いがついた私はそのまま続ける


「はい、まだ幼いころの夢」

「幼いころ…」

「その夢で、私は男の子を怒らせてしまって」

「・・・」

「怒って去っていくその子を引きとめる時、幼い私が叫んだの」

「・・・」

「業平殿、って」


言葉を区切って彼の業平殿を見る
彼は驚いたように目を見開いていた


「業平殿、婚約が決まった時、言ってましたよね?
約束を破るなんて許さない、って
その約束って、もしかして私をお嫁さんにするという約束?
あの約束の相手は貴方だったの・・・?」


勢いに任せて一気に問いかける
驚いたのかしばらく固まっていた業平殿は、そのままの表情で小さく呟いた



「思い出すとは思ってなかったな・・・」



やっぱりそうだったんだ…

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