翠の桜

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じりじりと後ろに下がると同じくじりじりと距離を詰めて来る業平殿
助けを求めてあたりを見回すが、当然誰もいない


「な、何で近づいてくるんですか!?」

「貴女が逃げるからでしょう
往生際が悪いですよ」

「そ、そんなこと言われても…」

「覚悟を決めておいてくださいと言っていたでしょう?」

「だってぇ〜・・・」


思わず情けない声がでた

そんな言葉を交わしながらもひたすら後ずさっては詰め寄られを続けていると背中が何かにあたった

「!?」

バッと音が立ちそうな勢いで後ろを振り向くと見えたのは壁
いつの間にか部屋の端まで下がってきていたらしい

ひくりと顔が引きつる
そぉっと業平殿を窺うとにやりと笑みを浮かべた彼がすぐ近くにいた

「っ!?」

慌てて横にずれて距離を取ろうとするが、その前にとん、と彼の両手が私の顔の横におかれる


「!?!?」

「捕まえた」


楽しそうな声音でそう言う彼
確かに正面には業平殿
左右には彼の両腕
完全に捕まった

え?これどうすればいいの?
私どんな反応すればいいの?

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