翠の桜

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早朝
日の出と共に帰っていった業平殿を見送り、私は一人物思いにふけっている

結婚に夢など抱いたことはなかった

いつかお父様の決めた人と何となく結婚して、子供を産んで、何事もなく老いていくものだと思っていた

だが、実際に結婚が決まってみれば相手は筒井筒の仲(だと最近気づいた)年下の従兄弟
しかも初夜に覚悟ができていないとふざけた事を言う私を受け入れ、抱きしめて共に眠るだけで帰って行く程のお人よしぶり
口喧嘩が日常だった頃からは考えられない

彼は一体何がしたいのだろう

確かに昔結婚の約束をした
だが、そんな約束を律儀に守る必要などあるのだろうか


「何かもう何も分からないわ・・・」


考えれば考えるほど彼が分からなくなる
もはや考えることも面倒
しかし考えないと決めても気がつけば考えている

抜けられない穴にはまってしまったような感覚

こんなにいろいろと考えるのはいつ以来だろう
いや、こんなに考えたことは今までなかったかもしれない


「もういや・・・」


愚痴を吐き出して大きく溜息をついた

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