翠の桜
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あの日から早数日
当り前のことだが彼は毎夜、私の寝所にやってくる
あたりまえでないのは彼が私を抱きしめて眠るだけで何もしてこないという事だけ
心の準備ができていない私としてはありがたいことだが、疑問は消えない
どうして何もしないの?
どうしてそんなに優しいの?
どうしてそんなに幸せそうなの?
どうして私と結婚したの?
・・・どうして私は貴方を見るたびに苦しくなるの?
どうして・・・
彼と会うたびに疑問は増える
会わなくても疑問は増える
疑問が増えると同時に時間も過ぎていき、気がつけば露顕の儀を終えた私は彼の正式な妻となっていた
「姫様…いえ、奥様
このたびは誠におめでとうございます」
「「「おめでとうございます」」」
「・・・ありがとう」
目の前で頭を下げる乳母を始めとする侍女にひきつった笑顔でお礼を述べる
いや、めでたいことなのは分かっている
分かってはいるがどうも腑に落ちない
きっと自分の中に渦巻く疑問が解決されるまで納得する事は出来ないのだろう
「今日の夜にでも聞いてみようかしら…」
・・・でも前に聞こうとした時は何だか有耶無耶になって終ったのよね
「次はきちんと答えてくれればいいけれど・・・」