翠の桜

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去っていった彼の後姿を呆気にとられて見送る


・・・え、理由は?
教えてくれるっていったのに…
というか、何?今の態度
体調が悪いって・・・
まぁ確かに顔は赤かったけど
あれは熱があるというよりもどちらかというとまるで・・・

“恋でもしているような”


「!?っ〜」


自分で行きついた答えに顔が熱を持つ

恋?誰が誰に?

さっきの会話に出てきたのは業平殿と私のみ
そう考えれば答えは一つしかない

業平殿が私に恋・・・?


いやいや、ないない
ないったらない
だって今までは・・・

さっき業平殿が言っていたことを含めつつ、今までの彼の行動を思い返してみる


えっと、
小さい頃結婚の約束をして
私はそれを忘れてたけど彼は覚えてて
婚約者になる前は毎日と言っていいほど私の屋敷に訪ねてきていた
お勤めで来られない日は必ず(嫌味交じりの)文もきてたような…
私の結婚の話が出てきた途端、お父様達を説得して婚約者になって
結婚したら優しくて・・・


「・・・あら?」


え?ちょっと、なんだかこれって・・・


「…っ!!」


かぁ、と音を立てて顔どころか体中が熱くなった


「うそでしょう・・・?」


声が震える
なぜだかわからないが涙まで出てきそうだ

考え始めれば簡単なこと


「何で今まで気がつかなかったのかしら・・・」


我ながら鈍いにもほどがある
自己嫌悪に陥った私は一人溜息をついて頭を抱えた

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