翠の桜
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“業平殿は私のことをずっと昔から慕ってくれていた”
私が最近気がついたこの事実は、周知の事実だったそうだ
なぜそんな事が分かるかって?
実は私がその事に思い当った日
自分の思いこみなのではないかと考えた私は夜が明けて早々に女房たちに聞いてみたのだ
そうすると彼女たちは皆口をそろえてこう言った
「まぁ、今までお気づきになられなかったのですか?」
って・・・
聞くところによると彼女たちは随分と前からその事を知っていて、それとなく業平殿と私の間を取り持とうとしていたらしい
具体的に例をあげると
他の殿方からの文をできるだけ私の目に触れないようにしてみたり
私に嫉妬させようとわざと彼と他の姫君たちの噂を聞かせてみたり
それとなく私の前で彼を誉め称えてみたりなどなど・・・
そこまでされていて気がつかなかった私っていったい…
聞いた時はなんだか悲しくなった
だがそんな気分も長くは続かない
彼は今夜もやってくる
私はその時にどんな顔をして彼に会うかを考えるので忙しいのだ