翠の桜

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「・・・で、彼に結婚前と変わらずにいようといったのね?」

「え、えぇ…そうですけど…」


肯定しながらうなずくとお姉さまの顔が引きつる


「嘘でしょう…?
鈍い鈍いとは思ってたけどここまでとは…業平殿もかわいそうに・・・」


ぶつぶつとつぶやきながら頭を抱えるお姉さま
しばらく様子をうかがっていると一つため息をついて顔を上げた


「ん、分かったわ
少しづつ考えていきましょう」

「考える?何をですか?」


問うとお姉さまはいいから、と前おいて話を始めた


「貴女は業平殿の思いにやっと気が付いたのでしょう
その時どう感じたの?」

「どう、とは…?」

「そのままよ
業平殿が自分のことを慕ってくれていると知って、どう思ったの?」


言われて少し考える

業平殿が私を慕ってくれていると知って思ったこと・・・

最初は純粋に驚いて、次に恥ずかしくなって、嬉しいけどなんだか落ち着かなくなって…

思いついたことをそのままお姉さまに伝えていく
そうすればお姉さまは楽しそうに笑った


「そう…なら少し考えてみて?
もし、業平殿が貴方じゃない方を慕っていたらどう思う?」

「私じゃない方を・・・?」


私じゃない方を、業平殿が慕っている…
・・・。


「・・・何だか想像つきません」

「・・・確かに私も想像つかないけど
ん〜…あ、ならこうしましょう
業平殿ではない方に、長年慕われていたと知ってどう思う?」


業平殿ではない方に…?


「・・・特に何も。
お父さまが仰れば、結婚はすると思いますけど」


そう告げるとお姉さまの顔が輝く


「業平殿のときは嬉しかったのよね?」

「えぇ、まぁ」

「ほかの殿方は別に何も思わない」

「はい」

「この違いは何だと思う?」

「違い…?」

「そう、業平殿とほかの殿方との違いはなにかしら」


違い?
・・・

しばらく考え込んでいるとくすくすと笑われた


「あら、分からない?
つまり貴女の中で特別ということよ」


そういって立ち上がるお姉さま


「特別・・・」


ぽつりと呟くと優しい笑みが返ってきた


「そう、せっかく業平殿の気持ちに気が付いたんだから、今度は貴女の気持ちを考えてみなさい
意外と簡単に答えは出るはずよ?」


悪戯に笑い、そう言い残してお姉さまは自室に帰って行った

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