憂鬱少女ときれいな谷
□6話
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みんなが周りを取り囲む。
幸せそうに、花の香りすら目に見えるくらいに。
なんて素敵な光景だろう。
嬉しくてたまらなくて、私たちは喜びの瞳をかわすのに、
振れた指先から、頬から、毒がまわってみんな死んでいく。
さらには花も枯れ、空が淀み色彩を失い始める。
「だめ、来ないで…!」
触れると死んでしまうのに、毒がまわってしまうのに。
誰もが笑みを浮かべて近づき、私はそれを拒むことができない。
来ないで 行かないで
離して 離さないで
人波が崩れて、その向こう。
ただ一人 立っていた。
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