たばこの煙
□毒を食らわば
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アパートの一室には煙がこもる。
「ルパンからは?」
アリサのあくまで平坦な声に、次元は携帯電話を振る。
「音沙汰なし。」
「何してんのかしらねえ。…けほっ。」
この部屋にはテレビがない、ラジオもない。広げたままの新聞と灰皿以外は何もなかった。
「テーブルもソファもなしとは、気が利かないぜ。」
愚痴を言うように壁にもたれる隣の男は、寡黙だった。
私のほうも口数は少なく、並んで壁にもたれているだけで、満足感のようなものがあった。
「けほっ。…エッホ!ケホケホ!オッホア!」
「おいおいおいおい。」
たばこの煙にあてられてむせ返る私を見た次元の顔は、どこか可笑しそうであった。
「お前さん、なかなか大胆だな。」
「とりあえず心配して…。」
涙目をこすりながら、壁に背を預けなおす。
再び部屋には沈黙が満ちた。
はずだった。
「フフフ…。」
聞きなれない音が聞こえる。
それは、次第にクックック、ヒッヒッヒと形を変えて大きくなっていく。そしてついに・・・
「あーはっはっは!はーっはっはっは!」
クールなガンマンが裏声になりながら大声で笑い声を立て始めた。
「え?…え?」
「さっきの咳がじわじわ来たぜ。アリサ、色気なさすぎ。」
ひとしきり笑った後、帽子を直し、落としたたばこを拾い上げると、おもむろに腰を上げた。
「どこいくの?」
「煙たいだろ、ベランダで吸うよ。」
未だ湧き上がる笑いをかみ殺して、外へ出ていった。
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