憂鬱少女ときれいな谷
□4話
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ムーミン屋敷はもう目の前だ。
この橋を渡って、ドアをたたく。
さぁ、なんて声をかけよう。
静かに深呼吸をする私をよそに、スナフキンが足を止めた。
「さぁ、着いた。」
「え、でもムーミン屋敷は・・・。」
この先なのに、と疑問の消えない私に、スナフキンは
「ここでいいんだ。」
静かに言ってポケットからハーモニカを取り出した。
ところどころ銀のメッキがはがれていて、スナフキンにぴったりと寄り添ってきたことがうかがえる。
スナフキンが息を吹き込むと、とても柔らかい音がした。
いいなぁ…と、思わずにはいられなかった。
スナフキンもハーモニカも、お互いを必要としているんだ。
(私、ひとりなんだわ…。)
そんなふうに考えてしまう自分が許せなかった。
あとからあとから涙が流れてきた。
できるだけ静かに、スナフキンに気づかれないように泣いてみたけれど、鼻をすする音がやけに大きく音色を邪魔した。
「スナーフキーン。」
ムーミンの声がした。
ピタリと音が止んでも、スナフキンは何も言わなかったけど、ムーミンのほうを向いていたので、ムーミンがここにたどり着く前に涙をぬぐった。
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