憂鬱少女ときれいな谷
□8話
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その日、目が覚めて私はなんとなく気を落とす。
今日が来てしまった。
体を起こしても眠ったままの頭が、昨日を思い出す。
『運動が足りないんじゃないか?
気持ちの問題さ』
声が鮮明に蘇って、涙が頬を伝う。
胸が痛い。
締めつけられているように苦しい。
おもわず床に座り込んだ。
爪を立てるほどきつく抱きしめた肩が痛い。
激しく脈打つ鼓動に急き立てられるように、呼吸がはやくなっていく。
うずくまって額をつけた床の感触すらわからない。
言い知れぬ不安。
こんなにも心臓が動いているのを感じるのに、今にもその音が途絶えてしまいそうな気がした。
(おさまれ、おさまれ)
念じるようにその言葉を繰り返す。
左手はつかむように胸を押さえ、右手は何かを求めるように床を這う。
堅く目をつむると、友人の顔がひらめいた。
(ムーミン…)
すがるように伸ばした手は、宙をかいて力を失った。
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