たばこの煙
□煙が目に染みる
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薄暗い店内のカウンター席で 静かにグラスを傾ける。
席から席までってこんなに遠かったかしら?
「今回の仕事は?」
「…不二子がもってきたヤマだ。」
「そう…。」
「・・・。」
チリンとグラスの氷が音を立てて溶ける。
隣では若い男女が肩を寄せ合いながら愛を語っているのに
次元と私の間にはため息も届かない空間があった。
「私は、あなたを守ることしかできないけれど
弾除けくらいにはなるから、この体は遠慮なく使ってちょうだい。」
「女に守られてたんじゃ、男として失格だな。」
フッと笑ってまた酒を煽る。
「固いこと言わないの。
それくらいしかできないし、あなたを守るためなら死ねるわ…。」
「・・・。」
チラリと視線がこちらにむけられた気配がした。
私は視線を落としたままで
「あなたのためなら、死ねるのよ。」
静かに伝えた。
――コト
隣でグラスを置く音が聞こえると
人の気配が 次元の気配が消えた。
「・・・。」
次元が去った後も、私は一人で
カクテルを傾けていた。
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