たばこの煙
□タイニー・ユー
2ページ/6ページ
それは本当に偶然の出会いだった。
「ぬふ〜今日も楽勝〜♪」
俺はその日、それなりにデカい仕事をこなして、途中立ち寄ったカジノで大当たりした帰りだった。
「一発勝ちでそのままクールに帰る俺ってば、かっくい〜!」
右手でコインを玩びながら、夜の明かりの中を意気揚々と歩く。
この場所は夜になると活気は収まるが、店の中ではにぎやかに歌う声があちこちから聞こえてくる。
「ちょっくら遊んでいきますか。」
そう呟いた時、
「ん〜?」
なにやら思いつめて石段に座り込む少女が見えた
「こんなところで一人でいるなんて、いい趣味じゃないぜ?」
近寄って話しかけると、振り向いた少女の幼さに驚いた。
「君は…。」
「あの…なにか。」
明らかに背伸びをした赤い唇が戸惑ったようにうごく。
「…子供が歩く時間じゃないんじゃな〜いの?」
少女はかすかに笑う。
「私、24です。」
「うそーん!」
大声で叫ぶと少女はクスッと笑った。
「よく言われます。」
ポリポリと頭をかいて謝る。
「いや、大人の女の区別がつかなかったのは俺のせいだよ。」
それから隣に腰掛け笑いかける。
「俺、ルパン三世〜。きみは?可愛子ちゃん。」
少女はふふっと笑って答える。
「アリサです。」
はにかんで笑う表情は純朴で、新鮮に見えた。
「答えたくなかったらいいんだけっどもね?なんでまたこんなとこにいるわけ?」
瞳を覗き込みながら聞くと、アリサはちょっと眉を上げたが、話し始めた。
「彼とね、うまくいかないの。もっといい女と付き合いたいんだって。」
言いながらはめていた指輪をはずす。
「いい指輪だ。どうでもいい女に贈る代物じゃないぜ。」
「前の彼女のお古よ。」
「そりゃまた。」
大げさに呆れてみせるとアリサもまた笑った。
→