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□最期の
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声を上げて、名前を呼んで

一度だけでも。それが最後でも。



「…クットロラン」


手に乗せた破片が、当然ながら返事をするはずもなく。


結局温もりを得ないまま、あれは遠くへ行ってしまった。


『ジーカウェン様』


声が、脳内で反響する。


手を伸ばしても届きはしない。名前を呼んでも応えはしない。


だが、それでも、


「クットロラン…」


頭の中で繰り返されるレコードに、意味の無い呼び掛けを続けるのは、



(悪あがきだと知っている)

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