夢見処U

□恋をした
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私にはアストラルが見える。

それだけでも何も持たない私には奇跡のようなことだと頭では分かっている。

でもどうせ奇跡が起こるのなら、もう少しくらい神様は私に優しくてもいいと思う。



「ねぇ、アストラル。」

そっと掌を差し出せば重ねられたはずのそれ。

なのにアストラルの手は私の腕をすり抜けてしまう。


「どうして私は貴方に触れられないんだろう。」

こんなにも私は貴方を愛しているのに。

溢れ落ちた涙にアストラルが顔を歪めたのが分かる。

そして言葉を紡ぎ出す唇。


「どうして貴方の声が聞こえないの?」

こんなにも私は貴方に焦がれているのに。


「何て言ったの?聞こえない、分からないの。」

悲し気に伏せられた瞳に泣きたいのは私の方だと知って欲しい。

もう既に涙は止まる気配を見せないけれど。



そう、私は声も聞いたことのないそんな貴方に


【恋をした】



「アストラルが〈泣かないでくれ〉ってさ。」

「ありがとう遊馬、アストラル。」


慰めるように伸ばされた彼の手は、音もなく私の身体をすり抜けた。



END

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