小説

□お勉強しましょ!
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こうしてオレの恐怖の昼休みがスタートした。

一人分でも二人分でも作る手間は一緒らしく、母さんは嫌な顔ひとつせず、むしろ嬉々としてヒバリさんの弁当を作ってくれた。
自分のとヒバリさんの。2つの弁当を持って応接室に向かう。
はぁ、とため息がでるのは仕方の無いことだろう。
どう考えても、問題が解けなくてトンファーで滅多打ちにされる未来しか見えてこない。
せめてヒバリさんが弁当を気に入ってくれて、ちょっとでも手加減してくれたらなあ。

恐る恐る応接室のドアをノックして、返事を待つ。
「どうぞ。」
「し、失礼します!」
オレはぎくしゃくとドアを開けて、中に入った。
「そこ座っていいよ」
言われるままにソファーに座る。
「あ、あの。これうちの母が作った弁当です。お、おくちにあうかどうかわかりませんが…」
「ん、ありがと。これお茶ね」
はい、と湯のみを渡されて、反射的にぎゅっと握り締めた。からん、と中の氷が小気味よい音を立てる。
ヒバリさんはするりとオレの座っているソファーに腰を下ろしてきた。
ちょっとぎょっとして、身体がびくっと跳ねた。
「…なに、その反応」
じろりと睨まれて首を竦める。
「い、いえ。す、少し緊張してまして!は、ははは、はは!」
…どうしてオレの隣に座るんだよーっ!せめて向かいに座ってくれたらいいのに。

それから二人して並んで黙々と弁当を食べた。
オレは恐ろしくて全く顔が上げられなかったから、ヒバリさんがどんな風に食べていたのか全然知らない。
それでも口には合ったようで、「ごちそうさま」と満足そうな声がきこえた。
「お、おそまつでした」
そういいながら最後の一口を必死で呑み込んだ。
とりあえずは気に入ってもらえたみたいで、良かった。


「さあ、じゃあとりあえずこれやってみて。」
渡されたプリントの束を見て硬直する。
びっしりと書かれた問題の数々。数学、英語、その他あらゆる教科の問題がその数ざっとみただけで100はある。
「一応満遍なく出題したつもりだから。これで大体の学力を見させてもらうよ」

プリントを持った手がぷるぷる震えた。
無理、こんなの全部無理だ!
しかし「全くひとつもわかりません」などと白状できればダメツナなどと呼ばれてはいない。
オレは真っ青になりながらエンピツをもって固まった。
とにかく1問でも解かないとフルボッコにされてしまう。
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