小説

□ねこの森には帰れない U
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「ひーばーりーさんっ! いつもお願いしてるじゃないですか〜。オレ以外の人の前でお酒、口にしないでくださいって!」
「…ん〜? …してない。飲んでない。…酔って、ない。」
とろんとろんの瞳でぽやーっと言われても、説得力がまるで無い。

「…ちょっと、つなよし。……きみ、しばらく見ないあいだに、えらく顔がほっそりしたねぇ。」
ヒバリさんは顔を上げると、オレの肩越しに置物の大きな陶器の犬に話しかけだした。


――それのどこが酔ってないんですか!アナタは!!


ぺしぺし鼻の先を叩いて、首をかしげている。
「……なんだかつるつるしてる…。冷たいよ?」
「はいはい、それはオレじゃありません。オレはこっち!」
抱きしめていた身体を一旦離して、正面から見つめあうようにしたら、今度は不思議そうな顔で頬を触られた。
「……んあ?つなよしが3人、…いつ増殖したの? ……そんな匣、あったっけ?」
「しーてーまーせーん! ありませーんっ! もう、帰りましょう、ヒバリさん。」

オレはヒバリさんを横抱きに抱き上げようとしたけれど、思わぬ抵抗にあってしまう。
「いーやっ!…それやだ。」
「嫌って…抱っこされるの、嫌なんですか?」
こくり、とヒバリさんが頷く。
オレはため息をついて肩を落とした。

「ワガママいわないでくださいよ〜。そんなに酔っ払ってちゃ、自力で歩くの無理でしょ。」
「……酔ってない。つなよしは、いぢわるだ…」
つんとそっぽを向いてしまったヒバリさんを、とりあえず引き摺るようにしてソファに座らせた。

ちょっとヒバリさんを宥めてから連れ帰るしか無いかなぁ。
こんなことなら起こさずにそっと抱いて帰ればよかった。


どうでもよさそうな顔をしつつこちらをちら見しているザンザスと、にやにやしながら見物しているスクアーロが目線の端に映ったけれど、放置する。


「ヒバリさん、どうしてヴァリアーに入り浸っているんですか?」
ぶっちゃけ、ヴァリアーに来る暇があるなら、オレのところに来て欲しいのに。

「…ごはん、美味しいから。」
ヒバリさんはスクアーロのほうをチラッと見てにこっと微笑んだ。
スクアーロはかなり嬉しかったみたいで、上機嫌で「うおおい、ツナヨシもランチ食ってくか?結構残ってるぞお」と言ってくれたけれど、もうお昼は済んでいたので丁重に断った。
ううっ。スクアーロのごはん、確かに美味しいんですけど。なんかすごい負けた感じがして傷つくなあ…。
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