小説その2

□ねこの森には帰れない 〜雲雀さん風邪をひく〜
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ヒバリさんが風邪を引いた。


それ自体はあまり珍しくもない…というよりも、割と頻繁にヒバリさんは風邪を引くというか、熱を出す。
咳や鼻水はあまり出しているところを見たことが無いから、本当にヒバリさんの風邪=熱、みたいなイメージがあるんだけれど。
その殆どは風邪というよりも過労なんじゃないかな、と実は思っている。


そしてこれまたいつものことなんだけれど…。
ヒバリさんが寝込んだことは、よっぽどのことが無い限りオレに知らされることは無い。
何日も寝込んだらオレにもバレるとは思うんだけれど、ヒバリさんは中学時代に風邪をこじらせて入院して以来、熱にはかなり敏感なようで早めの処置を心がけているらしく、長期に寝込むことは殆ど無くなっている。

ヒバリさんはオレの大学での護衛も請け負っているから、そんな時は代理として風紀財団のSPが付く。
その時にヒバリさんが寝込んでいるのか仕事が忙しいのか突然の出張なのかの判断はつきかねるわけなんだが、そこはもうオレのお得意の勘に頼るしかない。
実際には超直感でそんなことが分かるわけもないので、オレの勘はほぼハズレまくるんだけれど。



「沢田さん、今日はお忙しい日ですか?」
普段は日本に駐在している草壁さんから珍しく電話があったときも、オレは全く別の用事だと思って悠長に構えて電話を受けていた。
「今日ですか? 一応外回りの仕事がいくつか入ってますけど。ヒバリさんは確か昨日から日本ですよね。今頃はそちらでゆっくりされてるのかな? 宜しく言っといてくださいね。」
「あー、いえ、そのー。実は雲雀も私も今まだイタリアに居りましてですね。日本行きは中止になりまして…。」
「えっ、そうなんですか? 何か緊急事態でも?」
オレは俄かに緊張して電話を握り締めた。
「いえーその、雲雀がですね。昨日の夕方から少々熱を出していまして…。あっ、熱自体はそんなに大したことが無いんです。多分今日一日おとなしくしていたら問題無い程度なんですけれどね。」 
「あーそうなんですか。では夕方にでもそちらにちょっとお邪魔して……」
「そのう、沢田さん。熱自体は大したことは無いんですが…。あのですね…。」
暢気にほけほけ電話の応対をしていたオレは、草壁さんの次の一言で即効部屋を飛び出す羽目になった。
「先ほど雲雀が酒を結構な量、口にしてしまいまして……程よく酔っ払ってしまっているんですが……いかが致しましょう?」

―――ヒバリさん、オレが居ないときにはお酒を口にしないてくださいって、あれだけお願いしてるのにーっ!!



「あっ十代目、そろそろ外回りのお支度を……」
「全部キャンセル! 代わりにキミ行っといて!」
「えええっ? ちょ、ちょっと待ってくださいっ!?」
慌てる獄寺くんを尻目に、オレはボンゴレの屋敷を飛び出した。すぐに車に乗って『おとなり』の風紀財団に乗り付ける。(おとなりさんだけれども、車で5分はかかるのだ)
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