小説その2

□きんいろ恋奇談 〜お目付け役と家庭教師サマ、参る!〜
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きんいろ恋奇談 〜綱さま、困惑する〜のつづき
※九尾狐の超ツナさま×猫又の雲雀さんパラレルラブコメ。かなり適当な話なのであまり深く考えないでください。獄寺が雲雀のお目付け役だったり、草壁が綱の側近だったりします。(取替えっこ!?)※



ここは白面金毛九尾狐の城の長の私室。
つまりはオレ以外、許可無くむやみに立ち入れない場所で。

「―――待たせたな、ヒバリ。」

気だるげにあくびをかみ殺しながら長いすに寝そべるその人の下へ、オレは息せき切って駆けつけた。


「すまないな、遅くなった。」
「本当だよ、もう帰ろうかと思ってたところ。」
はふぅ、と漏らした可愛らしいあくびのせいで目じりに溜まった涙をぺろりと舐め取ってやると、彼は若干嬉しそうな顔をしてすりすりと擦り寄ってきた。
「ねぇ、もう邪魔は入らないよね?」
「大丈夫だ。明日の昼前までは完全に空いている。その間だれもここには入ってこないぞ。」
ヒバリはとても満足そうな顔でふふっと笑うと、長いすに座ったオレの身体の上にちょこんと乗っかった。
黒いねこみみは機嫌よさそうにぴくぴくしていたし、黒いなめらかなしっぽもゆらりゆらりとゆっくり揺れている。
どうやら少々遅くなったことは許してくれたらしい。

「じゃ、早く僕とイイコトしよ?」
ごろごろごろ…と喉を鳴らして覆いかぶさってくるヒバリの背中を、ゆっくりと撫で付けてやる。
彼は身体をくねらせながら、フニっと俺の唇に自分のを押し当ててきた。
「んー。気持ちいいね。アナタの炎もとっても美味しい。……綱も、美味しくて、キモチイイ?」
「――う。……んー、まぁ、イイ…かな?」
オレはヒバリと違って『相手の炎を食べる』習慣は無いから、そこのところはノーコメントだ。

「何その言い方。本当は気持ちよくないの?」
若干気分を害したのか、むうっとした様子でヒバリが俺の顔を覗き込んでくる。
「いやいやいや! 気持ちいいよ! いいです、ハイ!」
「ふぅん。…なら、いい。」
すぐに機嫌を直したヒバリは、嬉しそうにオレの胸元に顔をこすり付けてきた。

(………はぁー。なにこれ。忍耐の限界試されてるのか?オレは。)
オレはヒバリには気づかれないように、心の中でため息をついた。


ほんの偶然から、九尾狐の長であるオレがなぜか仇敵の間柄にあるはずの猫又に懐かれてしまったのはつい最近のことだ。
昔からいがみあっている仇敵同士だし、陰の気を持つ九尾狐と陽の気を持つ猫又の相性は最悪で、本来ならこんなこと絶対にありえないはずなのだが――詰まるところ、オレも自分に懐いてくるこの可愛い黒猫さんのことがまんざらでもなくて、どうしても無碍にできず…。
結局オレとヒバリは、お互いの種族に隠れてひっそりとお付き合いをしていた。


「綱、もっと楽しいコト、する?」
オレの胸元から上目遣いに見上げてくるヒバリは、そう言って切れ長の瞳をふっと細めて笑った。
「…あぁ。」
オレは若干複雑な心境のまま、こくんと頷いた。
ここでいう『もっと楽しいコト』というのは――決してオレが期待するようなエロいことなんかじゃなくて。

ヒバリにせがまれるままに、背中を撫で撫でしていた手で耳の後ろをそっと掻いてやる。
反対の手でしっぽもさすってやるとヒバリは目を細めて実に気持ち良さそうに伸びをした。
そうしながらオレの上に座り込んでいるヒバリの身体をぎゅっと抱きしめてやると、心底嬉しそうにごろごろ言いながら抱きしめ返してきた。
「ん。綱の身体あったかくて気持ちイイ。もっとぎゅってして?」

これが、ヒバリのいう『気持ちよくて、楽しいコト』なのだから……。オレとしては複雑な心境だ。
これじゃ恋人同士というよりも、ペットとそのご主人様だ。(しかもワガママペット様に御仕えする僕みたいになっている!)
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