小説その2

□花ならつぼみ番外編 〜ハクタク骸さまの里帰りの巻〜
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※一応『花ならつぼみ』の派生のお話ですが、総攻めでマザコンでシスコンでファザコンでブラコンの骸さま主体のお話です※



並森山の神社を治める天狗の雲雀と、美しくも愛らしい伴侶の天狐のツナの間には、10人の子供が居りました。
二人はたいそう仲がよく、並盛の統治は子供のうちの何人かに任せて離れで優雅な生活を満喫していました。
そのらぶらぶいちゃいちゃぶりは凄まじく、子供たちが辟易して顔をしかめるくらいです。
まだまだ保護が必要な小さい子供はともかく、ある程度育った子供たちはそれぞれさっさと独立して時々両親のもとを訪れるようになっていました。

10人の子供たちは実に個性豊かで、親の雲雀と全く同じように天狗の姿のものおりましたし、ツナと同じような天狐の姿のものもおりました。そしてどちらにも似ていない――妖魔同士の交わりではそういうこともあるのです――全く別種の姿のものもいたのです。

雲雀とツナの子供の一人、黒曜に住まいを構えるハクタクの骸もその一人でした。
「僕は天狗でも天狐でもありませんが、この世の森羅万象に通じているといわれる有りがた〜い聖獣なのですよ。」
幾分得意そうにそう語る骸の横で、妹のナギが首を傾げました。
「でも骸兄さま、外見はウシ…。」
「気のせいです!」
しかし使い魔の犬と千種もナギに同意して口々に言い出しました。
「目玉も3つもあるぴょん! 多すぎるぴょん!」
「角も無駄に多いですよね。頭の2つはともかく、胴体の4つは意味が無いと思われます。」
骸は無意味に含み笑いを漏らしながら、二人の頭を張り倒しました。
「黙りなさい! ハクタクといえば昔から病魔や災い除けの象徴として敬われて当然なのですよ。ナギ、外見はウシっぽく見えても一応獅子っぽいという意見もあるのですよ! 犬、目玉3つ結構じゃないですか! 2つがド近眼になっても3つ目で遠くが見えます。千種、大は小を兼ねるというでしょう。少ないよりも断然多いほうがいいじゃないですか。ちょっとファッション的にもカッコイイでしょう! どうです、完璧じゃないですか。」
三人は一様に首を振って「そうは思わない(わ…)(ぴょん)(です)」と言いました。

しかし骸はめげません。不気味な笑いを浮かべながら、はあっと思わせぶりに首を振りました。
「どうやらこの前衛的で魂のしびれるような芸術を理解するには、お前たちはまだまだ子供だということですね。」
「どうでもいいけど、今日は並盛神社に行ってご馳走を食べる日だぴょん。早く行きたいぴょん。」
「骸兄さま…私も早くとおさまとかあさまにお会いしたい…。」
「そういえばそうでした。可愛いナギの言うとおりです、今日は手の空いている兄弟は皆そろうはずですからね、綺麗どころが一斉に揃って目の保養に…クフフフ。」
「骸さま。不気味なので笑い声を漏らしながらナギの手を握るのは止めてください、このシスコンの変態。」
「黙りなさい千種。シスコンなのは否定しませんが、変態とは人聞きの悪い。」
「ではついでにシスコンでブラコンでファザコンでマザコンの骸さま、これだけ揃っていれば立派な変態でしょう。」

くいっとメガネを指で上げながら千種が言ったとおり、骸はシスコンでブラコンでファザコンでマザコンの変態でした。
彼は可愛いものも綺麗なものも愛嬌のあるものも、全部が全部自分のものだと思っていましたので、兄弟たちに好きな人ができたり、恋人が出来たりするのをとても嫌っていました。
もちろん自分の両親たちのことも、二人でいちゃいちゃするのではなくて自分といちゃいちゃすればいいのに…と思っていたのでいつも仲を邪魔しに行きます。

兄弟の中でも彼が特に気に入っているのは、一番上の兄と、自分のすぐ下の弟の二人でした。
一番上の兄は外見は親の雲雀に瓜二つの天狗さまなのですが、性格は天狐のツナのほうに似てしまったのかちょっとぽややんでアホの子でした。
自分よりも年上なのにぼーっとした兄を世俗の垢から守るのに、いつも骸は苦労させられたので反動でいびり倒してしまい、兄からはかなり敬遠されるという悲しい目にあっていました。
すぐ下の弟もこれまた顔は雲雀にそっくりなのですが、なんと座敷わらしだったので、たまにとても子供になって泣き虫になってしまう子でした。
これはこれでいびって泣かせて楽しむのに丁度良かったものですから、やっぱりこちらからもあまり好かれていませんでした。
千種に言わせると「骸さまはあの二人から毛虫のように嫌われております。」…となるのですが、骸のほうは全くそうは思っておらず「またあの二人は照れちゃって。可愛いですねぇクフフフフ。」と一人勘違いをしておりました。
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