小説その2

□僕の雲雀ちゃん
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……待てよ。

僕は腕の中の雲雀ちゃんを今一度まじまじと見直した。
僕の視線に気がついたのか、雲雀ちゃんは切れ長の瞳で小首を傾げながら僕を見返してくる。
可愛いかわいい、カワイイ雲雀ちゃん。
その物怖じしない澄んだ瞳を見ていたら――唐突に気がついてしまった。

そっか。僕は、この子をただ飾り立てて愛でて眺めておきたいわけじゃなかったんだ。
じっとおとなしくお人形みたいに座らせておくんじゃなくて、笑って怒って膨れて拗ねて……色んな表情の雲雀ちゃんが見たいなぁ。
僕の下に組み敷いたら、きっと怒りながらもほんのり頬を染めて恥らったりするんだろうな。
恥ずかしいことを仕掛けたら、困惑しつつも羞恥のあまり泣き出すかもしれない。

僕は平静を装って歩きながら、今一度雲雀ちゃんの身体を舐めるように視線を這わせた。
うん、何て美味しそうなんだろう。
お風呂なんて悠長なこと言ってないで、今すぐ食べちゃいたいなぁ。うん、何で食べちゃわないんだ? 食べちゃっても、イイよね?

一人で勝手に納得して、僕は風呂には行かずに自分の寝室に雲雀ちゃんを連れ込んだ。





雲雀ちゃんを押し倒すのは実に簡単だった。簡単すぎて拍子抜けしたくらいだ。
「妖力わけてあげるから」って言ったら素直に信じてしまって、正直僕のほうがびっくりした。
もちろんセックスを介して妖力をやり取りできるのは嘘じゃないから、僕は喜んで雲雀ちゃんを抱きしめた。


まずはキスからだよね。
ほっぺにちゅーで周りが大騒ぎするくらいだから、きっと雲雀ちゃんはキスも初めてだろう。
そう思って「上向いてーお口開けてー」って指示したら、「不味かったら、食べないよ」と言われてしまった。

お口開ける=食べ物をもらえると思ってるんだ。
かーわいいねぇ。

僕と二人っきりでベッドに座っていて、しかも抱き寄せられてて、オマケに上向かされてお口開けてーなんて言われているのに、危機感ゼロなんだもんなぁ。
楽しくって楽しくってしょうがない。

ちょっと煽るようなことを言ったら、すぐムっとして。
ほんとうにあどけなくて可愛いったら。
何か言いかけた唇を強引に塞ぐと、閉じていた瞳がびっくりしたように見開かれた。
びくんっと身体が震えて逃れるような動きを見せたから、肩を掴んでそのままもっと深く口付けた。
そうすると、まん丸な瞳で僕をみて信じられないという顔つきをしたあと、またぎゅっと瞳を瞑ってしまう。
うっわ何その初々しい仕草。反則でしょ。

正直今までは、初物なんてげんなりだったんだけど。
処女なんてうっとおしくて面倒くさいだけだと思っていた。相手が未経験だと、興ざめしてベッドから追い出したこともあるくらいだ。
それなのに、どうだろう。
口付けひとつしたことのない初心な雲雀ちゃんに、身体の奥から沸き起こる興奮が抑えきれない。
たっぷり味わってもっとねちっこく楽しみたくてしょうがない。一体どういう心境の変化なんだろうねぇ。

そうして散々その甘い唇を貪って、やっと開放してあげた頃には、雲雀ちゃんはもう息も絶え絶えの状態で…。
荒い息をついてベッドにとさりと倒れこんだ雲雀ちゃんは、訳がわからないという顔つきでぼんやりと虚空に視線を彷徨わせている。
雲雀ちゃんはキスをされたということすら理解していないようで、僕が「キスするときは鼻で息するんだよ」と声を掛けでも戸惑った顔で見返されただけだった。
とろりと熱を含んで蕩けた瞳、桜色に上気した頬、吐き出される甘い吐息。その姿の全てが下半身直撃で、僕は一気に欲情した。

半分意識を飛ばしてしまっている雲雀ちゃんはそれはそれはもうエロ可愛くて、僕は自分の服を手早く脱ぎ捨てると、嬉々としてその美味しそうな身体にむしゃぶりついた。
和服っていうのはどうしてこんなにクるんだろう。
着物の下に手を入れて体中をまさぐりながら、僕はますます興奮してきてしまって、逸る心を抑えるのに苦労した。
裾も襟ももうほとんど肌蹴てしまって、雲雀ちゃんの白い艶かしい肌が見え隠れしている。
辛うじて腰紐がまだ全部解けきっていないから全裸じゃなかったんだけど、これ……真剣に全部脱ぐよりもエロい格好だ。

「あ…? ふ……あっ!」
体中の至る所に口付けしたり、揉みしだいたり、熱い息を吹きかけたりするたびに、雲雀ちゃんがあえかな声を上げて身もだえする。
なんて可愛くていやらしい姿なんだろう。

「や…! な、なに……これ、なに?」
視線に疑問符をこめて僕を見返しながら、雲雀ちゃんが弱弱しく首を振る。
力の入らない手で僕の動きを止めようと、必死で身体にすがり付いてきた。
「うん? 妖力の回復のための準備だよー。お注射するから、身体リラックスさせてできるだけ取り込み易いようにしておかなきゃねー。」
効果、半減しちゃうでしょ〜? って囁いたら、不審げな顔つきをしつつも、少しおとなしくなってベッドに横たわって眉を顰めつつも瞳を伏せた。
本当に、かーわいいねぇ。
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