小説その2

□逃した魚はでかすぎた!
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※超ありがちな展開に加え、一部の方には受け付けられないオチかもしれませんが、短いしコメディなので勘弁してください。内容的にはヒバ→ツナ+山ヒバちっく※


確かに。
確かにヒバリさんって、強いしカッコイイし男の人なのに綺麗だし、ちょっぴり憧れていたのは否定しない。

だけど。

「……僕とは、付き合えないって?」

それとこれとは話が別だと思います!






オレは応接室で、鬼みたいな形相をしたヒバリさんを前に、窮地に立たされていた。
何をトチ狂ったのか知らないけど、突然呼び出されて何事かと思ったら
「僕、君のことが好きみたいなんだけど」と睨みつけられたのだ。
何が起こったのか全然把握できずに、震え上がってぱくぱく金魚みたいに口を動かしていたら
「どうなのさ、付き合うのか付き合わないのかどっち!?」と脅された。

「え……ええ? かっこよくて最強のヒバリさんがオレみたいなダメツナを!? 冗談かなにかですよね?」
「僕だって何かの間違いかなって思ったけどさ、信じられないことに本当に君のことが好きみたいなんだよね。我ながら自分の趣味が信じられないけれど、諦めもついたからこうして君に告白してるんじゃないか!」

……なにげに失礼な物言いですよねヒバリさん…。

しかもヒバリさんはオレの胸倉を掴んで半分身体を持ち上げている。
これってどう見ても告白スタイルじゃないんですけど。どう見ても恐喝スタイルなんですけど。

「で、どうなのさ。白黒はっきりしなよ、まどろっこしいな」
ヒバリさんがその切れ長の瞳を更に吊り上げて迫ってくる。
そのきつい口調とは裏腹に、うっすらと頬が桜色に染まってたりして―――ちょっと、可愛いな、なんて思ってしまった。

はっ!? オレ何考えているんだ? 並盛の帝王、無く子も黙る無敵のヒバリさんを捕まえて可愛い、だなんて。

「え、ええええええとええとですね!」
オレはどきどきしながらちろりと上目遣いでヒバリさんを見上げた。
いやここで流されちゃ本物のダメツナじゃないかオレ! しっかりしろ!
「オ、オレの好みは可愛くって優しくって笑顔が似合うふわふわした女の子なんですっ! だから…だから、ごめんなさい!」

だから男のヒバリさんとは付き合えませんーっ! と心の中で続けて、深々と頭を下げた。

あぁ、もう咬み殺されるの決定だよ。ごめん、獄寺くんか山本…。オレの屍を拾ってくれ…。


覚悟を決めて目を瞑ったんだけれど、予想した衝撃はいつまで経ってもやってこない。
あれ?
オレは恐る恐る目を開いてみた。

…そして、そこに信じられないものをみた。

ヒバリさんが、ヒバリさんが……きゅうっと唇をかみ締めて、顔を真っ赤にして涙目になってふるふる震えている。

「…ひどい」
ぽつっと呟かれた。
「は?」
「ど、どうせ僕は可愛くも優しくもないし、笑顔なんて浮かべたこともないし、ふわふわもしてないよ! 悪かったね、こんな悪魔みたいな人相で!!」
ヒバリさんは一気にそう捲し立てると、どんっとオレを廊下へと突き飛ばした。
「沢田のバカ!!」

え?
ええ?
どうしちゃったんですか、ヒバリさん!?





あんまりにもびっくりしちゃって、呆然と佇んでいたら―――いつの間にか獄寺くんと山本が側に居た。
二人とも妙な顔をしてオレを見つめている。

応接室の扉はさっきまで開けっ放しだったし、オレとヒバリさんは結構大声で叫びあっていたから、ひょっとして今のやりとり、聞かれちゃったのかな……?

「え、ええとええと…」
えへへ、と愛想笑いして誤魔化してみつつ、二人と一緒に廊下を歩いて応接室から離れた。
しかし二人の微妙な顔つきは変わらない。
…やっぱ、駄目かぁ…。

「ごめん、お見苦しいところをお見せしました…」
もごもごと口ごもっていると、獄寺くんが神妙な顔をして口を開いた。
「十代目、ちょっと今のはあまりといえばあんまりなんじゃないっすかね? いえ、雲雀の野郎なんて十代目に全くもってふさわしくありませんよ? でもですね、今の断り方はちょっと酷いってか、十代目らしくないっす! 十代目はもっとこう……『こんなに崇高なオレのこと好きになってくれてありがとう。でもこの美しくて清らかで純粋で優雅なオレは皆のものなんだ、きみ一人だけのものにはなってあげられないんだ…ごめん』とかですね! それでこそ我らが素晴らしくも誉れ高い十代目…」
「あ、あああのさ獄寺くん、いつも思うけどオレのこと、おとぎの国の妖精かなにかと間違えてない? オレ普通のっていうか、どっちかっていうとダメダメな人間なんだけど」
「いえ十代目は空から舞い降りてきた天使です!」
「……………。違うと思うんだけど…」
きらきら瞳を輝かせている獄寺くんは、なんかもう別の世界に旅立っちゃってるみたい。

あはは、とオレは今度は山本のほうを向いてへらへらと笑ってみた。
ところが、山本は獄寺くんよりももっと険しい表情で
「…ツナ、そりゃ人の好みは色々だから、強要はできねーと思うけどさ。今のは確かにツナらしくない言い方だったぜー。なんであんなこと言ったのさ。」と言ってきたのだ。

オレは目がテンになってしまった。
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