小説その2

□逃した魚はでかすぎた!
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「いや! おかしいこと何も言ってないだろ! オレの好みは可愛くって優しくって笑顔が似合う女の子で、だからヒバリさんとは付き合えないって、これのどこがおかしいんだよ」
「だってそれって要するに、ヒバリが可愛げもなくて暴力ばっかり奮ってニヤっと壮絶な笑みしか浮かべない嫌なやつだから付き合えないって意味だろ!? ちょっと酷すぎねー?」
「はぁ!?」
どこをどう取ったらそういうことになるんだよ!? 

しかし山本も、なぜか獄寺くんもオレがそういう意味で言ったと思っているらしく、二人でうんうんと頷きあっている。
なんでだよーっ!?

「ツナの好みじゃねーのかもしれねーけどさ、ヒバリって超可愛いぜ?」
「はぁ!?」
山本が少し非難がましげな目つきでオレに力説してくるんだけれど、どう答えていいのやら…。
「たまーにだけどはにかんだように笑うの、あれが良いんだよな」

は、はにか……!? 
オレははにかむヒバリさんの微笑みとやらを想像しようとして、失敗した。

「それに滅多にないけど気が向いたら優しいときあるぜ? 気分がいいときは咬み殺さずに見逃してくれたりさ、俺らのことだって何だかんだ言って助けてくれるしさ」
「いや……それはそうだけどさ……」
気が向いたら咬み殺さないって、それって優しいの部類にいれていいの?

「ヒバリがツナのこと気にしてるみたいだったし、ツナもヒバリのこと好きなんだと思ってたのに。あんなひでー言い方で断るなんて、ツナ、見損なったぜ! 二人が上手く行ったら祝福しようと思ってたけど止めた。俺、もう遠慮しねーからな! ちょっと今から応接室行ってくる!」
「はぁ!? ちょ、山本!?」
オレが止める間もあらばこそ、山本は踵を返して今来た道を戻ってしまった。
そしてくるっと廊下の先で振り向くと
「上手くいくように祈っててくれよなー!」とひらひらと手を振ってきた。

「ちょ、獄寺くん、何がどうなってるの!? なんでここで山本が応接室!?」
オレはおろおろして思わず獄寺くんにすがってしまった。
獄寺くんはでれでれしつつ(ちょっと怖いよ!)さらりと答えてくれた。
「あー、あの野球バカはずっと雲雀の野郎に気があったみたいですからねー。傷心の雲雀を慰めに行ったんじゃないすか。んであわよくば……ってなもんじゃないっすかね!」

今度こそオレは本当に目がテンになってしまった。
や、山本って……お、おとこのひと、OKなんだ!?





「おいダメツナ、おまえヒバリからの告白断ったそうじゃねーか」
自称オレの家庭教師サマは、そう言ってばこっとオレの頭をハリセンで殴ってきた。
「な、なんで知ってるんだよ!?」
「俺にそれを聞くか? 愚問だな、アホツナめ」
ぐ、ぐもんってなんだろう…?
曖昧に笑っていたら、はあーっと超特大のため息をつかれてしまった。

「なんで断ったんだ、もったいねぇ」
「は、はぁ!?」
オレは耳を疑った。
リボーンって前から変わってると思ってたけど、ちょっとぶっ飛びすぎじゃないの!?
まさか男のひとからの告白を断って『もったいねぇ』と言われるとは思わなかった……。

「い、いやだってヒバリさんだよ? あのヒバリさんだよ? 断らずに付き合うとか無理だよ、無理無理! オレ絶対毎日咬み殺されて終わっちゃうよ。命がいくつあっても足りないって!」
「ヒバリなんざ掌の上で転がして遊んでやるくれーの力量みせやがれ、ダメツナが。山本にとんびに油揚げ攫われてどーすんだ」
「えっ、や、山本、ヒヒヒバリさんと上手くいっちゃったの!?」
「さすが生まれながらの殺し屋、手ぇ早かったな」
にたっとリボーンが笑った。そんなどす黒い微笑み、赤ん坊がするもんじゃないよ。
「えーっ! や、やまもとなにしちゃったのーっ!?」

うわーっ! 明日からオレ、どんな顔して二人のこと見ればいいんだろ。





次の日、どうしようとびくびくしながら登校したんだけれど、ヒバリさんは校門のところには立っていなかった。
はぁ、ちょっとほっとしたよ。

「十代目、おはようございます!」
「おはよう。」
獄寺くんは相変わらず、直立不動でオレに挨拶してきた。
そこまで畏まらなくてもいいんだけどなぁ。
「はよー、ツナ。」
そうそう、このくらい、山本くらい砕けてくれたら…
「お、おはよう、やまもと。」
山本は上機嫌でバシバシオレの肩を叩いて、ふんふんと鼻歌を歌っている。

「え、えっと山本? なんかご機嫌みたいだけど……ひょっとして、そのう…」
「えっ!? そう見える? やだなー。」
山本は照れくさそうに笑いながら、がしがしと頭をかいた。

「ま、まさかおめー、昨日あのまま雲雀の野郎に薬を盛ったり卑怯な手を使って縛り上げたりして、ヤっちまったんじゃ…」
獄寺くんが物騒なことを口にして身を乗り出してきた。ちょっと、獄寺くん、目がマジで怖いよ。
「んな犯罪ちっくなことしねーよ、するわけないだろ。ちょこっと話しただけだぜー。」
「ちょこっと話しただけ…? それでなんでそんな機嫌いいんだよ、てめー。」
「いやー、今後も応接室遊びに行ってもいいって許可もらったからさ。すげーんじゃね?俺! みたいな!」
「けっ、たったそんだけで頭に花が咲いたみたいに喜べるとか、本当に安上がりなやつだぜ! ね、十代目?」
いや、オレに同意を求めないでよ獄寺くん……

どうしていいのかわからなかったので、とりあえず「よ、よかったね、山本!」と言っておいた。
「うん、ありがとな! ツナ。まぁツナの断り方はちょっとひでーって思ったけど、アレくらいはっきりフッてくれたほうが却って諦めもついたみてーだったし、ヒバリにとっても良かったみてー。昨日はキツイこと言ってごめんな」
「い…いやいやいや、気にしないで、山本」

そ、そっか…。ヒバリさん、昨日のこと、綺麗に吹っ切れたんだ。山本のお陰なのかな?
ちょこっとだけ胸がツキってなったような気がしたけど………きっと親友の山本が離れていっちゃうような気がして、寂しくなったんだろう。
うん、そうだよ、そうに違いない!



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