小説その2

□毛づくろい★パニック!
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※大人ザンザス(大型雑種猫さん)×15雲雀(黒猫さん)のパラレルファンタジー。かなり適当なのであまり深く考えないでください。設定をシュガーインクのN縞さんの『野良猫社会』シリーズからお借りしています。が、しこたま捏造しまくってます…スイマセン※







オレはこの辺一帯を牛耳っているボス猫だ。大きなお屋敷だって持っているし、部下も沢山いる。
屋敷にくっ付いているジジイはいっぱしにオレを飼っているつもりになっているようだが、実際はオレが執事の真似事をジジイにさせてやっているだけだ。

オレの朝はまず軽くシャワーを浴びることから始まる。
その後適当に毛づくろいして、ジジイが嬉々として用意した朝食に手をつけてやって、それから縄張りの見回りに出かける。
しかし、正直毛づくろいなんざ面倒くせぇから、洗いざらしで放置ってのもよくあることだった。
……そう、以前までは。



「やぁ、早くこっちに座ってよ」
オレがシャワーを浴びて頭を拭きながらリビングに戻ると、やっぱりというか案の定というか、ヤツが大きな顔をしてソファーに寝そべりながら手招きしてきた。

「…まぁた来やがったのか、ヒバリ」
「そうだよ」
そいつは黒い尻尾をゆったりと揺らしながら、はふぅとお上品なあくびをもらした。


この世間知らずな黒猫のクソガキに懐かれちまってから、オレのささやかな平穏な生活はどっかに行っちまった。

日向ぼっこしながらいい気分で寝てりゃ、『ねぇ、あっためて』と無理やり腹の下に潜り込んできやがるし(転寝の邪魔をするなって幾ら言っても聞きゃしねぇ)、洗いざらしの髪を眺めて『あなた毛がぼさぼさだね。起きたら毛づくろいしてあげる』と余計なことを言ってくる。
そのくせ、いざ転寝から起きたら『僕もう帰る。じゃあね』とひらりと消えてしまって。

毛づくろいはどーしたんだよ、毛づくろいは! いや別に期待してたわけじゃねーけどな!
…と一人で憤慨していたら、次の日の朝になってオレがシャワーを浴びた直後に、一体どこから忍び込んだのかソファーでのびのびと寝そべって『起きたから毛づくろいしてあげに来たよ。早くこっちにきて』と言い出す始末。

もう、コイツの行動全部がびっくり箱で訳が解らねぇ。
最近はもう殆ど諦めの境地で、こいつの好きにさせてやっている。



「ねぇ、早くしてよ。今朝は風紀検査があるから、早めに登校するんだから」
「…だったらオレの毛づくろいなんざ放っておいて、さっさと行きやがれ」
「やだ。あなた本当に無頓着すぎるんだもの」
まだ義務教育中のチビガキ相手に本気で怒ったってしょうがねぇ。
オレはため息を付きながらソファーに近づいて、ヒバリの横にどっかと腰を下ろした。
「本当にぼさぼさだね。タオルでごしごし拭いちゃだめなんだよ」
ヒバリは興味深げにふんふんと髪の匂いをかいでから、かしかしと毛づくろいを始めた。


「うおぉい、ボス。朝食の準備ができてんぞぉ」
部下のスクアーロが部屋に入ってきたのだが、熱心にオレの毛づくろいをしているヒバリを見て動きを止めた。
しばらく妙な目つきでオレとヒバリを眺めていたスクアーロだったが「朝食、おまえも食ってくんだろぉ?」とヒバリに声をかけていた。
「目玉焼きは半熟にしてね。それとパンはくるみ入りのやつね」
「わかったぞぉ」
スクアーロはもう一回オレのほうを妙な目つきでちらりと見たあと、部屋を後にしていった。

…くっそー、いかにも何か言いたそうな顔しやがって。お前らが『ボス、最近宗旨替えして幼児趣味に走ったらしい』とか噂してやがるの、知ってるんだぞ。
アホぬかせ! こんな乳臭いガキなんざ相手にするわけねーだろ! …と声を大にして言いたいが、どうせ『またまた〜ボス照れちゃって』とか言って本気にされないのがオチだから、ひたすら我慢している。



ヒバリが満足するまで毛づくろいをさせた後、テラスに設えられた朝食のテーブルに移動した。
ヒバリは当然のような顔をしてオレの後を付いてくると、膝の上によじ登ってくる。
最初の頃はうっとおしくて首根っこを掴んで放り投げたものだったが、懲りもせず擦り寄って来てはまた登ってくるので、終いには根負けしてしまって放置状態だ。

ヒバリを膝の上にちょこんと乗っけたまま一緒に朝食を食べていたら、リーゼント頭の風紀委員がヒバリを呼びに来た。
「なぁに、まだ時間の余裕あるよね。僕まだご飯中なのに」
ヒバリがむうっとした顔で口と尖らせながら言うと、リーゼントは困惑した顔で「はぁ……それはそうなんですが、ラウさんが御呼びで」と答えた。
途端にヒバリはオレの膝の上から飛び降りて、ぱたぱた尻尾を揺らしながらよいしょっとテラスの柵を乗り越えようとした。
打てば響くとはこのことだ。

「僕もう帰る。じゃあね」
「おい、ちょっと待て!」
思わず呼び止めようとしたんだが、ヒバリはこっちを振り向きもせずにひょいっと飛び降りて走って行ってしまった。


…くっそー。また『ラウ』かよ。
オレはムッツリしながらスクアーロの運んできたエスプレッソを口に運んだ。

ヒバリの中では、どうやらオレの優先順位は『ラウ』とやらよりも下らしい。
普段うっとおしいほどにベタベタ引っ付いてくるくせに、あっさり『じゃあね』って…何なんだ一体。
別にあんなチビガキ一匹がどこで何をしてようがオレには関係無いが、それでもこういうことが続くとクソ面白くないのも事実だ。

『ラウ』ってーのがどこの誰だか知らねーが、お金持ちの家で飼われているあの大型犬のディーノみたいにヒバリをでろでろに甘やかして猫可愛がり(いや、ヒバリは確かにネコだけどな!)してる奴なんだろう。
あのバカ。あっちにもこっちにもホイホイ懐いて付いていきやがって。そのうち痛い目みても知らねーからな!
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