小説その3

□こっそり『ねこ』裏話 〜雲雀さまは苦労性? その3〜
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こっそり『ねこ』裏話 〜雲雀さまは苦労性? その2〜の続き

※たいへんにヌルイですが白蘭×雲雀の初夜が出てきます(予定)ので、一応R18表記してあります、苦手な方はご注意下さい※





いつもは飄々としてつかみどころが無い男が、あんぐりと口を開いたまま呆けているのが面白くて。
僕のねこみみを撫でている男の手を、きゅっと握ってすりすりと頬を摺り寄せた。
男の手はひんやりと冷たくて、とても気持ちがいい。

「な…なにコレ、本物の猫さんの耳…みたいじゃないっ! けど、そっそんなハズ無いよね! す、すっごく精巧にできた付けミミだなぁ、ははははは」
「あなたの、いってること、わけがわから…ないよ?」
首を傾げた拍子に、どうしてだか手に持っていたグラスがつるりと滑り落ちた。
「おおっと! あっぶな〜い」
反射的にだろう、白蘭がさっと手を伸ばして受け止めた。
僅かに底に残っていたワインの雫が、男の掌に零れ落ちていく。

「ひょっとして、雲雀ちゃん、酔っちゃったのかな〜? ……僕の飲み残しをほんの少し飲んだだけなのになぁ…」
「んん?」
僕は反対側に首を傾げた。
男がまた意味不明なことを呟いている。
そんなことより、白蘭の手に零れ落ちたワインが気になって……僕はぺろりと舌を出してそれを舐め取った。
そのまま指を咥えてみる。うん、美味しい。
以前もチョコがついた男の指を咥えたことがあったけれど、その時もそのままずっと舐めしゃぶりたくなったっけ。

ぐるぐる喉を鳴らしてしっぽをぱたぱたさせつつ、ふと上目遣いに男を見上げれば―――ぎらぎらした野獣のような瞳で見つめられて、背筋がぞくっと震えた。
最近ずっと微妙に反らされていた視線が、真っ直ぐ僕を射抜いている。
その熱の篭った鋭い視線に、身震いするほど嬉しくなった。
一体何がスイッチになったのかよくわからないけれど―――白蘭が、ようやく、ぼくと、闘う気に、なった、みたいだ!

最近甘やかされてすっかり忘れていたけれど、僕は、この男と、思う存分、闘って…みたかった、んだ。
パートナーのことはひとまず置いておくとして、今はその気になった白蘭と、思う存分闘いたい。

すっかり嬉しくなった僕は、ふよふよとしっぽを振りながら瞳を眇めて男に笑いかけた。
「ねぇ…。ぼくと、闘(や)ろうよ」
ごくり、と男の喉が鳴った。
「ひ、雲雀ちゃん……………誘ってるの?」
「ぼくは、最初から、ずっと、あなたを、さそってるよ」
わかってて、知らん振りしてたくせに。
僕はちょっとふくれっ面をしながら、顎をツンと反らした。

「……………色気のいの字も無い子供だ子供だって思ってたのに、こんなに………な子だったなんて…」
「なぁに? くちの中で、もごもご…」
言われてもわからない、と言いかけた僕の口が、いきなり熱い吐息で塞がれた。
唐突に白蘭の顔が間近にみえて、思わず反射的にきゅっと目を瞑る。
くち、に、フニっとしてて暖かいものが、当ってる…?
頭に霞がかかったようにぼんやりして、何が何だかよくわからない。

「雲雀ちゃん、顔赤いし、おめめうるうるしてる。キス、気持ちイイの?」
男のちょっと茶目っ気を含んだような、それでいて余裕の無い切羽詰ったような声が聞こえてくる。
キス…? キス…って、なんだったっけ?
「ね、もっとしてイイよね?」
促されて、流されるようにこくんと小さく頷く。
『もっと』って、何をするんだろう…?

また男の顔が近づいてきた。
今度は目を瞑らずにじっと見ていたら、男の唇が僕のに押し当てられようとしているのが見えた。
…あ。キスって、口と口をちゅってやるやつか。
………それって…?
何か重大なことを思い出しそうだったけれど、下唇を何度も甘噛みされて、なぜか背中がぞくぞくしてきて何も考えられなくなる。

「ね、雲雀ちゃん。ちょっとお口開けて。噛んじゃダメだよ〜?」
なんだろう、と思いつつ、素直に従ったら、いきなりぬるりとしたものが口の中に入り込んできた。
びくりと肩を震わせて後ろに仰け反ろうとしたんだけれど、いつの間にかがっちりと抱き寄せられていて動けない。
それは僕の舌をちょんちょんと突いては離れていくのを繰り返し、やがてねっとりと舌に絡み付いてきた。
「ふ…むぅ、…んっ」
息が出来なくて苦しいような、それでいてうっとりするほど気持ちイイような―――こんな感覚、知らない。


何時の間に移動したのか、気がついたときには寝室のベッドの上で白蘭に圧し掛かられていた。
「何にも知らない箱入りちゃんだと思ってたのに、ネコミミコスプレまでして誘うなんて、どこでこんなコト覚えてきたの」
白蘭は僕のねこみみに何度も唇を押し付けながら、そう囁いてきた。
こんなコトって何なの、とか、コスプレってどういうことさ、とか色々言いたいことはあったのだが、口を開けば妙な声が出るばかりで、全然話ができそうにない。
なに、これ。何でこんなに変な声、でちゃうんだろう。

「ふふ、そんなにえっちな声出しちゃって…。本当にいやらしい子なんだから」
白蘭は今にも喰らいつきそうな瞳で僕を見下ろすと、着物の襟を掴んで大きく肌蹴た。
「雲雀ちゃんが悪いんだよ。哲ちゃんが『子供だ、子供だ』って言うし、相当の箱入りみたいだったから、手ぇ出す気なんて全然無かったのに」
首筋を舐められて、また妙な声が僕の口から溢れる。
…毛づくろいと、殆ど変わらない、はず、なのに…。なんで?

くやしくなって、丁度目の前にあった白蘭の耳たぶを咬みころすつもりで咥えてみた。
……つもりだったんだけど、力が入らなくてカプカプ甘噛みになってしまう。

「ははっ、雲雀ちゃんもその気なんだね。うん、今夜はとことんまで楽しもうね〜♪」
するり、と男の手が着物の下に忍び込んできて、一瞬びくんっと身体が硬直する。
「ん〜♪ 雲雀ちゃんめちゃくちゃ敏感なんだね。可愛いなぁ」
白蘭は狂気を孕んだ瞳を僕に向けると、にいっと口の端を吊り上げて笑った。
「もうね、僕、日本では本当に目立たないように、おとなし〜く、地味に暮らすつもりだったんだよ。極力厄介事には首を突っ込まないようにしてたのに、雲雀ちゃんったらお構いなしに僕に纏わり付いてくるからさー、何だかこっちも色々ヤバくなってきてね。これは洒落にならないって、ガス抜きのつもりで女のコナンパしても、僕の身体、ちっとも反応してくれないんだよね!」

貴方の言っていることは、相変わらず訳が分からないよ。
…そう、言いたいのに、口を開けばあられもない喘ぎ声が漏れるばかりで。

「僕、男には興味無い、ハズだったんだけど、なぁー。おかしいよね。雲雀ちゃんの保護者きどりの金髪のイケメンに絡まれたときもさぁ、あんなの、普段なら笑って流せるのに。…変だよね。『俺の恭弥』なんて台詞聞いたら、いきなり猛烈に腹が立ってさ。つい、手が出ちゃった♪」
けらけらと声を立てて笑うと、白蘭は僕を熱を孕んだ瞳で見下ろした。

「さぁ、雲雀ちゃん。僕と………ヤろうよ」
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