小説その3

□こっそり『ねこ』裏話 〜雲雀さまは苦労性? その3〜
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だから、最初から僕はあなたと闘(や)りたいって、いってるじゃない。

僕はぼんやりした頭でそう考えると、こくりと頷いた。
自分から腕を伸ばして、白蘭の首に巻きつける。
さぁ、これからぐちゃぐちゃになるまで闘って、咬みころして……。

そう、思っていた、ハズ…なのに。
気づけば僕は男とまた唇を合わせていた。


柔らかく啄ばむようなキス、激しく舌を絡め取られるキス、優しく触れ合うだけのキス。
男が与えてくれる色んなキスが余りにも気持ちよすぎて…その事以外考えられなくなる。
ぴるぴる、とねこみみを震わせると、男がくすりと微笑んだ。
「すっごい精巧な付け耳だねぇ。まるで本物の猫耳みたいに動いてるよ。こんなの作るなんて、雲雀ちゃんって相当なマニアだねー」
なんとなくむぅっとして、しっぽでぺしぺし男の身体を叩くと、きゅっと軽くしっぽの先っちょを握られてしまった。

…あ……、それ、なんか…身体がぞくぞくって…。
もっと触れて。もっとキスして。もっと…もっと…もっと……。


男が与えてくれる快感の波に飲まれて、その後のことはひどく曖昧だった。
やめて欲しいような、もっと激しくして欲しいような、不思議な感覚が全身を満たしている。

「雲雀ちゃん、雲雀ちゃん、雲雀ちゃん…なんてえっちな表情してるの。僕、本当に…手加減、できなくなりそう」
全身を這い回る男の手が、舌が、より一層激しさを増していく。
僕の着物は既に辛うじて帯が腰に引っかかっている状態で、殆ど肌蹴てしまっていた。
露になった両足が、男の手によって大きく割り開かれ、恥ずかしい場所が丸見えになる。

「雲雀ちゃん、下着、つけてないんだ。うわ、ジャッポーネのキモノはエロいって聞いてたけど、想像以上だねぇ」
男の食い入るような視線が、痛いくらい注がれているのが分かる。
恥ずかしくて足を閉じたいのに、体が思うように動かせなくて身悶えしていたら
「うわぁ、自分から腰を振って誘うなんて、なんてエッチな子なの」
男が心底嬉しそうな声をあげて、信じられないところに指を這わせてきた。

「あっ…や…」
「大丈夫、いきなり挿れたりしないよー。ちゃぁんとゆっくり解してから、ね。でもそれまで我慢できるかなぁ、僕」
いれる…? なに、を?
瞬きしながら首を傾げると、男が小さく息を飲んだ。
「雲雀ちゃん、それわざと? 本当に誘い上手なんだから。 無意識だったらタチ悪いよ〜」
言いながらベッドの脇に手を伸ばして、ごそごそ音を立てていた。
なに、してるんだろう…?
「んー。まさかブービー賞でもらったひやかしグッズが役に立つ時がくるなんてねー。人生何が起こるか分からないものだね♪」
口調はおどけているようだが、白蘭の瞳はぎらぎらと切羽詰った輝きを宿していて、ほんの少しだけ不安になる。

べ、別に怖いとか、そんなコトは無いんだから。
ちょっと、これから何をされるのか、気になるだけ…なんだからね。

「大丈夫、大丈夫、力抜いてね〜。慣れたら痛くないから」
それって、慣れてなかったら、痛いってこと?
ムッとして睨みつけたら、より一層男の表情が切羽詰ったものになった。(…なんで?)
「もう、雲雀ちゃんったら誘い上手なんだから。そんな表情されて、我慢なんて…無理だよ」

いきなり男の指が、やや乱暴に僕の中に挿入ってきた。
思わず甲高い声が口から漏れて、僕は男の首に両腕を回してひしっと抱きついた。
男はしきりに『大丈夫、大丈夫』と僕の耳元で繰り返したけれど、これ、全然、大丈夫じゃ、ない、じゃない。

そりゃ…確かに、痛く…は、ない、けど…。
苦しくて、ぬるっとしててちょっと気持ち悪い。
ああ…でも、へん…すごく、変な気持ちに…なってきた、ような…。
僕はその奇妙な感覚から逃れようと、夢中で男の口に吸い付いて自分から舌を絡ませた。


「雲雀ちゃん…。本当に、キスが好きなんだねぇ。じゃあ、キスしながら……いい?」
息を弾ませている僕に、白蘭がそう囁いてくる。
なにが、『いい』んだろう…?
「安心して。ちゃんと大人のたしなみは付けるから。哲ちゃんも『ありえないですけど、まさかそんな間違いは犯さないでしょうけど、万が一、本当に万が一ですね、そういうコトになったら、必ず必ず!ゴムは付けてくださいよ!!』と力説してたっけー」
…ゴム? 輪ゴムが、どうしたんだろう…?
きょとんとしている間に、男はまたもやごそごそして、そして狐のような瞳を吊り上げて息を荒げた。
「雲雀ちゃん、ちょっと急いじゃったかもしれないけど、僕もう限界だから。いいよね?」


そのまま男に覆いかぶさられ、深く口付けられて――わけがわからないなりに、『ねこ』の本能に従って――僕は、自分から、身体の力を抜いて男を迎え入れた。




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