小説

□僕は、きみのためにこそ恋を知る
1ページ/3ページ

僕は群れるのがキライだ。

その僕が唯一群れるのを許したのは、あの子だけだ。
そんな気は全く無かったのに、気がついたらちょこんと僕の心の片隅に居座っていた。



あれは僕が中学を卒業するときだったろうか。
あの子はいつも僕を怖がってギャーなんて間抜けな悲鳴をあげるくせに、その時は僕に縋ってわんわん泣いていた。

「ヒバリさーん。もう会えないなんて悲しいですーっ」
鼻水とヨダレと涙で顔はぐちゃぐちゃ。
そんな格好で僕に抱きつかないでよ。学ランが汚れるだろ。

両手でぐぐぐ・・・と押し返して身体から離したんだけど、スッポンみたいにしつこく縋り付いて来る。
思わず顔面に蹴りをいれて(まぁ軽くだけど)ふっとばしたけれど、キョンシーみたいに起き上がってまた抱きついてきたのには戦慄を覚えた。

これはアレだ。なんとかしないと取り憑かれる。
自慢じゃないが僕は幽霊とかオバケとかは・・・正直苦手だ。
だって実体が無いんだよ?トンファーで殴っても効果が無くて、トイレの中とかからヌーッて出て来るんだよ?

「別に学校別れても会えるだろ。引っ越すわけでもないんだから」
「だってオレ、ヒバリさんの家知りませんーっ!今までみたいに学校で見かけることが出来なくなったら、どこで貴方を観賞したらいいんですかーっ」

観賞って・・・。僕は観葉植物か熱帯魚なのか。

「もう・・・・・・。わかったよ、たまになら君のところに顔だしてあげるから。」
ぴーぴー泣き続ける小動物の頭をぽんぽん撫でてやりながら、僕は不本意ながら妥協した。
「ほんとですかっ!?ヒバリさん・・・・・・嬉しいーっ!!」

涙でぐじゅぐじゅの顔をぱあっと輝かせて笑ったあの子を、可愛い・・・なんて思ってしまったのは、僕だけの秘密だ。


「ついでに携帯の番号とメルアドくださいっ!!」
「それは嫌。第一きみ、携帯持って無いでしょ。」
「あう〜〜〜ヒバリさんのいぢわるっ」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ