小説

□メビウスの片思い
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海外での生活は目が回るほど忙しかったが、充実した日々だった。
勝手に僕の家庭教師を名乗っている金髪男の家は意外に快適で、予想に反して僕はぬくぬくと快適にくつろいでいた。
跳ね馬自ら可能なかぎり僕の戦いの相手をしてくれるし、それ以外でも甘やかすだけ甘やかしてくる。
僕のために日本食の専用シェフまで雇ってくれたのだから、甘すぎて胸焼けがしてくる。
そんなに自分の生徒というものは可愛いものだろうか。僕にはよくわからない。

赤ん坊もよほど風紀財団が欲しいのか、僕の財団設立にかなり尽力してくれている。
ここで恩を売れるだけ売って、あとで搾り取ろうという算段だろう。
自然と赤ん坊との連絡は密に取っており、今日も電話で財団の話をしたあと、会話は雑談に移っていった。

『そういえばヒバリ、日本にはいつ帰ってくるんだ?』
「なぁに?日本には定期的に帰るよ?3日前も並盛にいたよ、僕」
『なんだと。来てるならちょっとくらい顔だせ。ツナも寂しがってやがるぞ』
そういわれて僕は少し考え込んだ。

沢田に会って、僕に何をしろというんだろう。好かれてもいない、この僕に。

「沢田が?」
『あぁ、お前の連絡先知らないかって何度も聞いてきてたぞ。お前が嫌がるかとおもって言ってねえが』
「ふぅん。何の用だろ。別にいいよ、跳ね馬の所にいるって言っても。」
『いいのか?』
「別に問題無いだろ。それより、ねぇ、戦ってくれるなら日本に帰ったときに連絡入れてあげてもいいよ。」
『わかった、考えておく』
「話がわかるね。・・・好きだよ、赤ん坊」
『俺もだ、ヒバリ』

赤ん坊は僕のことを好きでいてくれる。だから僕も赤ん坊には最大限できることをしたいと思う。



5月に跳ね馬は馬鹿みたいにはしゃいで、僕の誕生日パーティとやらを開いた。
ボンゴレの暗殺部隊という連中と思う存分遊ばせてもらって、僕はかなり満足した。
跳ね馬にしては気の利いたプレゼントだと思っていたら、後で小さな箱を渡された。
こっちが本命のプレゼントだったらしい。
開けてみると、豪華な宝石がこれでもかと嵌め込まれたマリーアントワネットがつけていたようなネックレスと『貴方の瞳に似ています』と書かれたカードが入っていた。
意味がわからない。

赤ん坊からはメールが来た。
『並盛の近況報告だ、懐かしいだろう』と書かれた写メが添付されていたのだが、どの画像にも沢田が写されていた。
笑った顔、寝ぼけた顔、驚いた顔。色々な沢田が写っていた。最後に見たときとあまり変わっていないようだ。まあ、まだ2ヶ月しか経ってないんだから当然か。
何か勘違いして間違えて添付したとしか思えなかったが、消すのも面倒だったので、そのまま保存した。
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