小説

□ねこの森には帰れない
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「いや、きっぱりはっきりスッキリ振ってくださいよ!!玉砕覚悟で来たんですからっ」
やけくそ気味に叫んだら、きょとん、とした顔で首を傾げられた。
「振ったほうが、いいの?」

いや、いいわけじゃないんですけどね…。
なんなんですか、この人!!もう〜〜〜!


「そりゃ振られるよりもお付き合いしてくれる、な〜んて言ってくれたほうが嬉しいですけどっ、でも!」
そんなこと天地がひっくり返ってもあるわけ無いんだから、期待するだけ無駄だよね…。
しゅんと下を向いて決定的な断りの言葉を待つ。

「嬉しいの?ふぅん。じゃあお付き合い、してあげる」
決定的な断りの――断りの…?

「…はぁ?え?」
なんだか幻聴が聞こえたような気がして、首をひねったら
「だから、お付き合い、してあげる」
もう一度丁寧に復唱されてしまった。

「…………。」
何が起こったのかわからず、ぼへーっとしていると
「聞こえてないのかな。お付き合い、してあげるって言ってるんだけど。」
と念押しされてしまった。
しかも、その後
「どう、嬉しい?」とまで聞かれてしまった。

「……どうも………。」
もごもごと、嬉しいです…と呟いてみたけど。


なんだかとっても嬉しくないような…複雑な気分なのは何故ですか………。





いや、なんの気の迷いか分からないけれど、あのヒバリさんが『付き合ってあげる』といってくれているんだ!!
いわばオレのことを本気で好きになってもらえるチャンスかもしれない。
前向きに考えよう!!努力次第で本当に恋人同士になれるかも…!

「あ、ありがとうございます!!とってもとっても嬉しいですっ。あの、その、こ、これからどうぞ宜しくおねがいしますっ」
「うん。」
深々と頭を下げると、ヒバリさんはとても満足そうな笑みを浮かべた。
うわーっ、ヒ、ヒバリさんの滅多に見られない笑顔がオレに向けられてるっ!生きてて良かった…。

「ま、まさかヒバリさんがOKしてくれると思ってませんでしたっ、お、男同士だし…。」
そこではっと気づく。

ヒバリさんってもしやそーゆーシュミの人だから、オレとのお付き合いOKしてくれたとかっ!?

なんだか思考が変な方向に流れてあわあわしていたら、ヒバリさんが呆れたように軽くため息をついた。
「きみって顔に出すぎ。言っておくけど僕、そーゆーシュミじゃないからね。そもそも男でも女でも、お付き合いしたいとか今まで思ったこと無いし」
きみは特別ね、と言われて、天まで舞い上がるくらい嬉しくなった。

と…特別って言われちゃったよオレ!!
本当の恋人に一歩近づいたって感じ?
ファイトだオレ!未来は明るいぞ!!


■■■

いろいろと空回りしちゃってるツナと、どこかズレている雲雀さんです。
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