小説

□花ならつぼみ 〜天狗さまと小ちゃな天狐〜
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並森山のお社の、そのまた奥には、神様が翼を休める泉があるといいます。
並森神社に仕える神子たちは、その泉を昔から大切に大切に守ってきました。

―――神様が禊をされる神聖な泉だから、禊の間は絶対に近づいてはならないよ。もし近づいてしまったら、魂を喰われてしまうからね。

彼らはそう子孫代々語り継いで、泉を荒らすものが無いようにずっと見張り役を務めておりました。


◆◆◆



ふかふかの耳としっぽを持つツナは、今はほとんど見かけなくなってしまった天狐の一族の末裔です。
「おなかすいたよう〜」と、神社の前でぴるぴる泣いているところを、鬼一族の草壁に発見されて保護されました。
身寄りが無かったツナは、そのまま見習いとして神社に身を寄せることになったのです。


見習い神子のツナの朝はとても早くて、一番鳥が鳴き始めるときにはいつも身支度を終えています。
……の、はずなのですが、お寝坊さんのツナのこと、いつも遅れて大慌てしてしまいます。


「ふにゃ〜、また、寝過ごしちゃったぁっ。」
パタパタパタと廊下を走っていたら、廊下を曲がり頭にぱふっと何かにぶつかってしまいました。
「きゃん…」
ぺちゃん、と廊下に突っ伏したツナは、低い鼻が更に低くなってしまったかもしれない、と慌てて鼻を撫でました。



その時です。誰かにぎゅっと腕をつかまれて、引っ張り起こされて、ぎろっと怖い瞳で睨まれてしまいました。
「つなよし…、廊下走っちゃだめでしょ。」
「ひぃっ!?ひ、ひばりさんっ!!」
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