小説

□波乱万丈な綱吉くんの日々
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AM 08:20


「おはようございま〜す。」
びくびくしながら校門を通過した。強制的に起こされたおかげで遅刻はしなくて済んだよ…。

オレの頭の中はこれからの3日間のことでいっぱいだ。獄寺くんが居れば一人暮らしのマンションにお邪魔させてもらうんだけどなぁ。
しかし昨日から獄寺くんはお休みだし。
どこに行ったとか何をしてるかとか、オレは何も聞いてない見てない教えてもらってない!!

ぶんぶんと頭を大きく振ったら、振り過ぎたみたいで斜めに倒れそうになった。
「うわっひょぉう!」
校門に激突しそうになったところで必死に体制を立て直したら、くるりと一回転したあげくなんとも奇妙なポーズになってしまった。

校門のところに整列していた風紀委員さんたちの顔が何故だか奇妙にゆがみ、小刻みに震えている。
「あ…へへへ。お勤め、ごくろうさんですっ。」
なんだか極道の挨拶みたいなことを言いつつ、ひょこひょこ愛想笑いをして通り過ぎようとしたら、
「………………あっはっは!」
すごく大きな声で笑われた。
思わず振り向いたら、ヒバリさんが身体を丸めて爆笑していた。


――ヒバリさんでも大笑いすることって、あるんだ…。


涙でも流しそうな勢いで笑っているヒバリさんの隣で、周りの風紀委員さんたちは悶絶しそうな顔で耐えていた…。
なんか、気の毒だな。





PM 12:30


お弁当を広げながらため息をついた。

今日はウサギが桜デンブで綺麗に描いてあった。色とりどりのお花畑でウサギが遊んでいるような感じの絵柄で、見た目にも色鮮やかだし、味付けもすごく美味しい。
母さん、最近芸術に目覚めたらしい。
あ〜あ、このお弁当も明日から購買のパンに変更かぁ。

山本のところに厄介になろうかと思ってさりげなく都合を聞いてみたら、今日は宴会と配達両方の予約が入っていて店の手伝いで忙しいらしい。
「まぁそれでも部活は休まないんだけどなー。」
そういってはははと笑った山本。
…きっと泊めてって頼めば、断らないどころか大歓迎してくれると思ったんだけれど、ちょっと遠慮しておいた。

また明日さりげなく聞いてみよう。





PM 16:45


ため息をつきながら帰り道をとぼとぼと歩いた。

お風呂もトイレも使えなくて、台所には足を踏み入れられない。
おまけに母さんは慌てていたのか、お金も全く置いていってくれなかったから、小遣いの残りでは明日の昼食のパンを買うくらいしかできそうにない。

今日はもう家に帰ったら寝てしまおう。
そうすれば朝まで何も考えなくてもいいかも。

はぁ、とため息をついて再び歩き出したときだった。

「ねぇ。」
後ろから声を掛けられて、飛び上がる。
こ…この声、まさか…。

「どうしてそっちにいくの?」
振り向けばそこにはやはり、学ランをなびかせて不思議そうな顔でオレを見ているヒバリさんが立っていた。

「えっ!?どうしてって…い、家のほうに向かってるんですけど!寄り道とか決してしてません、しようとも思ってません!」
慌てて無実を主張してみれば、「そんなの、分かってるよ。」とばっさり言われた。

「そうじゃなくて、今日から水まわりの工事だって言っただろ。家には入れないよ。」
「えっ!?ええ?」
なんでヒバリさんがオレの家のこと、知ってるの!?

唖然としているうちに、首根っこを引っつかまれて引き摺られた。
「うわっうわわわ何なんですかーっ!」
「ちょっときみ、煩いな。」
そのままひょいと肩に米俵みたいに担がれてしまって、オレは「うひょろろぉ!」と情けない叫び声を上げてしまった。

「………。妙な雄たけび上げるの、止めて。ツボにはいるから…。」
ヒバリさんの肩がぶるぶる震えている。
「しゅ。しゅいません…。」


ヒバリさんって、案外笑い上戸なんだな…。




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箸が転がってもおかしいお年頃。
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