小説
□ねこの森には帰れない V
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「ねこの森」雲雀さん視点のほのぼのアホ話です
※オリキャラが出張っています※
一度手にしたら、手放すのが怖くなった。
僕は興味の無いことには、基本無関心だ。
その僕が、沢田のことは初めて出会ったときからずっと見ていた。
最初は僕に怯えてびくびくしているだけの草食動物が、段々と変化を遂げていき、強く美しく成長して花開いていく様をずっと見ていたのだ。
僕の屋敷で決死の覚悟をした特攻隊のような表情でぷるぷるしながら正座している姿を見れば、なんだかおかしな方向に花開いたようなきもするけれど。
「あのですね、オレ…オレ、あなたのことが―――すっ好きなんです!」
そういって沢田は、なんだか遣り切った感満載の面持ちでガッツポーズを決めていた。
――変な子。
そんなの、きみをずっと見ていれば分かって当然なのに、何を今更言うことがあるんだろう?
この子は一体何がしたいんだろう…としばらく押し黙って観察していたんだけれど、沢田は至極満足したかのような顔つきで僕の出方を伺うばかりだ。
「ふぅん……、で?僕、何て答えたらいいのかな?」
本当にわからなかったから、そう尋ねてみた。
そうしたら彼は「キッパリ振ってくれていい」などと、これまた意味のわからないことを叫びだしたので、「振ったほうが、いいの?」と尋ねてみた。
好きだと宣言したあげく、唐突に振ってくださいって……本当に彼は何がしたいんだろう?
そうしたら彼は「振られるよりはお付き合いしてくれるって言ってくれたほうが嬉しい」と言い出した。
やっと意味のわかることを言い出した…と思って
「嬉しいの?ふぅん。じゃあお付き合い、してあげる」
と答えたんだけれど…。
彼は耳が突然遠くなったのか、ぽかんとした顔をして何度も「はぁ?え?」といいながら首を捻っていた。
僕がもう一度繰り返してあげると、複雑怪奇な顔をしてもごもごと何か答えていた。
本当に、きみ…変わった方向に成長したねぇ。
それでも自分の中で勝手になんらかの結論をだしたのか、彼は
「あ、ありがとうございます!!とってもとっても嬉しいですっ。あの、その、こ、これからどうぞ宜しくおねがいしますっ」
とすごい勢いで頭を下げてきた。
最初からそういう態度でくればいいのに。僕は至極満足して微笑んだ。
沢田はそれからも勝手に一人で舞い上がったり落ち込んだりとくるくる表情を変えていたが、それは見ていてとても面白かった。
うん。
『お付き合い』なるものが今までとどう違うのか見当もつかなかったけれど、なんだか面白そうから由としよう。
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「ねこの森」雲雀さん視点。ほのぼのした話になる……と、いいなぁ。
ページジャンプ用目次
★ 5P〜 手作り弁当』って、嬉しい?
★ 7P〜 そうだ、ベルギーに行こう
★10P〜 食い意地が張っている事件
★14P〜 シャワーを浴びたいってワガママ言われた