小説
□ねこの森には帰れない V
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僕はほんの気まぐれから、漫画なるものをいくつかネットで読んでみた。
最近は男女だけでなく、男同士の恋愛をあつかった本も結構でているらしく、BL特集なるものが組まれていて、探すのはとても簡単だった。
やたら瞳や髪や服装やらがきらきらした男たちが、一緒に授業を受けたり飲みに行ったり温泉旅行に行ったりといろんなシチュエーションで話が展開していく。
そして読み始めてすぐ、結構な割合で唐突にキスしたり身体をさわったり…という方向に話が進んでいた。
そのあとベッドで二人でもつれている絵が見開きで出てきたり、そうかと思えば野外で二人で重なり合ったり…と、読んでみると殆どが
告白→すぐキス→場合によってはすぐえっち
という感じだった。
えっちの場面もやたらきらきらしていて、具体的に何をしているのかよくわからなかったが…。
ふぅん。男同士のおつきあいってこれが普通なのかな。
僕と沢田で同じような場面を想像してみる。
うーん?なんだか現実味が無いというか…想像しようとしても、沢田が笑ったり慌てたりそのへんをぐるぐるしたりと騒いでいる姿しか想像できないな。
…あんまり、興味、湧かないかも。
僕はネット書店のブラウザを静かに閉じた。目が未だにきらきらちかちかしている気がする…。
そもそも『付き合っている』といっても、手ひとつ握ることもないし、付き合う前とどこが変わったのかよくわからない。
大学があるときは一緒に登校して、一緒に授業を受けて、一緒にお昼を食べて…。
僕は大学生活時の沢田の護衛を赤ん坊と契約して引き受けていたから、常に一緒にいるのは付き合う前も付き合い出してからも全く変わっていないのだ。
大学が無いときは、お互い仕事で忙しく飛び回っているから当然一緒に過ごすことは少ない。
これは、僕にしては珍しいかもしれないが、一度他人の意見なるものを聞いてみてもいいかもしれないな。
早速僕は実行に移す事にした。
たまたま出くわした風紀財団委員の一人を捕まえて、聞いてみる。
「ねぇ。ちょっと聞きたいんだけど。」
彼は途端に満面の笑みを浮かべながら、背筋をしゃんと伸ばして直立不動の姿勢をとった。
「はっ!わたくしで分かることでしたら何なりと!!」
「付き合うって、どういうことをするの?教えなよ。」
「………はっ!?」
「だから、恋人とお付き合いをするって、具体的に何をするの?」
何なりと、といったくせに…。僕の質問を聞いた途端凍りついたように動かない。
なんなの、一体。
僕は若干いらいらしながら次の標的に移動した。
「ねぇ。ちょっと聞きたいんだけど。」
「はっ、はい委員長。」
先ほどと同じ質問を繰り返すと、今度は真っ赤になって腰を抜かされた。
…なんなの、これ。
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雲雀さんが他人に意見を聞くことなどあるんだろうか!?と思いつつ捏造未来だからいいかー。