小説

□『ねこ』じゃないもんっ!
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きゃいきゃい言いながら膝の上の子供を猫かわいがりする綱吉を横目で見ながら、獄寺がため息をつきました。

「最近の十代目はすっかりあの『ねこ』の虜だな。さすが魔性の魅力をもつといわれる愛玩亜人種なだけあるぜ。」
「はははー。でも実際ヒバリって野良『ねこ』にしてはすっげー可愛くねぇ?」
「あんなクソ生意気なの、飼い『ねこ』のはずねーって! 絶対雑種の、捨てられ『ねこ』に違いないっ!」
「だけど、結構良い身なりしてるっぽいけどな〜。それに、なんか愛玩用の『ねこ』とはどことなく違うような…」
「どこがどー違うっていうんだよ?」
言われて山本はう〜んと首を捻りました。
「オレにもわかんねーけどさっ。でも何となくヒバリってこう、高貴な感じしねー?」
ぶんぶんぶん、と獄寺は勢いよく手を横に振りました。
「しないしない!まったくしねーって! そもそもそんなに高貴な出だったら、もっと大事に大事に家の奥深くで飼われているはずじゃねーか。生粋のウェアキャットってめちゃくちゃ高価なんだぞ。希少価値が高すぎて、天下のボンゴレでも買えるかどうか…。」


不思議な力を色々持つと言われている純血のウェアキャットは、今では殆ど見かけなくなりました。
最近よく見かけるのは、愛玩用の比較的安価な『ねこ』が殆どです。


「まー、ツナが喜んでるんだからさ、あんまり気にしなくってもいいんじゃねーの?」
ははは、と山本が笑うと、獄寺もしぶしぶながら同意しました。
何かと忙しくてストレスの溜まりやすい綱吉が、毎日あんなに楽しみにしているのです。
敬愛する綱吉のために、ちょっとくらいこの野良『ねこ』の存在に目を瞑ってもいいかな、と獄寺は考えておりました。





「ヒバリさーん、ほっぺにクリームついちゃってます〜。」
「ん。つなよしが、取ってくれてもいいよ。とくべつに、ゆるしてあげる。」
子供はもぐもぐとお上品に口を動かしながら、綱吉のほうに顔を向けました。
「かっ可愛い!本当にヒバリさんって可愛いです〜。じゃあ失礼してほっぺをごしごししちゃいますね。」
そう言って綱吉はウェットティッシュで子供の頬をそっと拭いました。
「つなよしも、お口のはしっこに、ソースつけてるよ。」
「あれ?本当ですかっ、はっ恥ずかしいな…。」
かぁっと紅くなりながら口をティッシュで拭おうとした綱吉ですが、子供がそれを押しとどめます。
「とくべつに、ぼくがとってあげるから、こっちにかお、ちかづけて。」
「あっはい!ああありがとうございます、お願いしますね。」
ウェットティッシュを子供に渡して、綱吉は顔をぐっと近づけました。

ぺろり。

「うひゃっ!? ひっひひひひばりさん今、今何しました!?」
子供の小さな小さな赤い舌にお口の端っこを舐められて、綱吉は変な声をあげて飛び上がりました。
「だぁめ。まだ、ついてるから、うごかないで。」
子供はそんな綱吉を気にもせずに、口の端をぺろぺろ舐めつづけています。
「あう…あう……、かっかぁわいいですううう!」

うちゅっ!

余りにも可愛らしい子供の仕草に、感極まった綱吉は思わず子供のお口に音を立てて口付けてしまいました。

子供はびっくりしてきょとん、と瞳を見開いています。

「つなよし…。いま、ぼくのお口にちゅー、したの?」

はっと正気にもどった綱吉は、ひいっと悲鳴を上げました。
「ごっごごごごめんなさいっヒバリさん、あんまりにもヒバリさんが可愛くって、つっつい出来心でーっ!」
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